掬い上げた砂は重力に従ってさらさらと手の平から零れ落ちる。これは私の希望。どんなに手を尽くしても、結局残されるのはほんの一握りの砂。これが私に守ることの出来る全て。
「泣いてるの?」
「…さぁ?」
己の無力さを知っている。だからいつだって守ることに必死だ。
「否定しないんだ」
大切なものを選ばなければならない。
「俯いてないで顔を上げなよ」
守らなければならないものとそうでないものとの区別を、はっきりとさせなければ、結局何も守れはしない。
「リナ」
「…少しの感傷くらい許してよ」
「許さないよ」
「酷い」
「君は僕のことだけを考えていればいいんだ」
私の中で絶対的な優先権を持ち続ける男は傲慢にも告げた。不思議と悪い気はしない。よくよく考えてみれば、今までだってそうだった。
「私にそんなこと言うの、貴方くらいよ? 恭弥」
「他にいたら、僕はそいつを生かしちゃおかない」
「…そうね」
私は恭弥の傍にいて、恭弥の傍で笑って、泣いて、沢山のことを知る、これからも知り続ける。
「わかったら顔を上げなよ。君がそんなんじゃ、こっちまで調子が狂う」
「嘘ばっかり」
守るのはこの身と、後はたった一つだけでいい。
「…行くよ、またつまらない仕事だ」
そうすれば私は、まだ、私でいられる。
「うん」
自分がちっぽけな人間[ヒト]であることを忘れないでいられる。
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