愛銃の弾倉とベルトポーチに詰め込んだ銃弾。
銃器をディスプレイしていたガラスケースの裏側から引っ張り出してきた予備弾倉。
「あー、落ち着く」
体に馴染むそれらの重さにリナは思わず表情を綻ばせた。
傍目から見れば怪しいことこの上ない。
そんな時、
「――リナ」
不意に呼び止められた。
振り向いたリナは声の主を目に留め立ち止まる。
「あ、おかえり雲雀」
一方呼び止めた雲雀は、普段エキドナが好んで着る黒のロングコートに身を包むリナに軽い違和感を覚えた。
本当に軽い、けれど軽視できない違和感を。
「・・・」
「どうかした?」
何かが違う。
「脱ぎなよ、それ」
「へ?」
「エキドナのコート」
何もかもが紙一重ですれ違う。
「似合ってない」
「酷っ」
そんな、何とも言えない奇妙な違和感。
二人で一人。他の誰とも違う彼女たちの存在に慣れきっている雲雀でさえも、もどかしくなる。
「だからさ、」
いいから、早く。
「早く脱いでお茶でも淹れてよ」
それを脱いで僕を安心させてよ、リナ。
「しょうがないなー」
君は大人しくここにいればいいんだ。
どうか、どうかもういなくなってしまわないで。
(似合わない、か)
リナの裏側、その遣り取りを聞いていたエキドナは一人微笑む。
(そうさ、似合っていいはずがない)
そして彼女が零した言葉は、表のリナにさえ届かず広がる闇に呑まれて消えた。
(私とリナは――)
温かい二人の闇に。
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