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「この書類、どこに置ますかぁ~?」
「そこに積んどいて」

 カリカリと、万年筆が紙をかく音
 それにあわせて、時折紙が移動する音
 そして最後に、カランと軽い音をたてて万年筆が転がった

「はぁ~・・午前の分終了!」
「おつかれさまでぇ~す」

 ゆっくりと、固まった体の筋を伸ばす男と、その横から程よく冷まされた紅茶を差し出す少女
 二人は柔らかい笑顔を交わし、その後声を立てて笑った

―――ぐにゃり

 机に向かっていた男の姿が、まるで粘土細工の様に歪む
 そしてその姿は、どんどん小さくなり、引き締まった体の黒猫へと転じた

『後は、本人にやらせろよ?』

 真っ白い室内にぽつんと、黒い生き物が声を発する

「はぁ~い!!」

 少女が発言をするときの様に手を挙げて返事をすると、猫は満足そうに笑い、いつの間にか開け放たれていた窓から外へと姿を消した
 残された少女は、楽しそうにスキップをしながら館の二階へと向かう

「ご主人様ぁ~? 猫さん帰っちゃいましたよぉ~」

 間延びした声が、二階の廊下に長々と響いた

―――キィィィィ

 それにともない、奥まった部屋の扉が軋みながら開く

「判った。そろそろ仕事するよ」

 純白の髪に灰色の服

 館の主人が、眠そうな眼を擦りながら現われた
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