「裏切り者が」
「そんな・・」
向けられた銃口。
「ならば証明するか?」
向けられた悪意。狂気。
「その身をもって」
銃声。
「ッ――」
風を切った影。
「バタ、フライ・・?」
赤を侵す銀。
「私を庇ったの!?」
伸ばされた、幼い――
「――楽しかったよ」
蝶の手のひら。
「ありがとう」
失われたラッシュ。
そこでいつも目が覚める。
「夢か・・・」
白々しい程に明かりが灯された部屋に男が一人、女が一人、子供が一人。
傍目にも高そうな椅子に座る男は立ち上がり女に銃を向ける。
女は目を瞠り男は嗤った。
引き金が見せ付けるように絞られる。
銃声の轟いた次の瞬間、子供は女の前にいた。
絶望に染まりかけた女の目に驚愕が浮かび、崩れ落ちる子供に思わず手を伸ばす。
子供は、笑った。男とは違う穏やかな顔で。
楽しかったよ、ありがとう。と、女に貰った自由の中で。
たったそれだけの夢だ。
「・・・」
それよりも凄惨な光景は厭きるほど見て来た。
なのにその、たった一人の女を年端もいかない子供が助けたあの瞬間が、目に焼きついて離れない。
自分と女を助け、男を殺す力を子供は持っていたのに、使わなかった。
何故。と、エキドナは問う。
それはね。と、リナはしたり顔で微笑んだ。
「楽しかったからだよ」
楽しかったからこそ、もう、終わってもよかった。
「・・・理解出来ないな、私には」
楽しかったからこそ、耐えられなかった。
「そう?」
楽しかったからこそ、
「あぁ、」
全てを、
「だからお前はやめてくれ」
神の手に委ねた。
必然という名の神の手に。
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