広目のベッドに上掛けは二人分。一緒に寝はしてはお互いに背を向け合っていることが常で、手を伸ばすだけで簡単に縮められる距離がなくなることは滅多にない。あったとしてもそれはいつだって私からで、恭弥からはない。
ごろりと恭弥の方へ寝返りを打ち、納まりのいい場所を求めて丸まり直す。
不意に目が覚めたのは思いがけず触れられたからで、けれど眠りを妨げられたことに対する不快感は全くといっていいほどなかった。むしろ何をする気なんだろうと興味の方が勝る。
上掛け越しに頭の上へ乗せられた手はしばらくの間ぴくりともしなかった。それでも辛抱強く待っているとゆるゆる頭の形を確かめるよう動いて、ベッドの傾きが変わる。引き寄せられたように感じたのは錯覚で、実際に寄ってきたのは恭弥の方だ。上掛けの中へ完全に潜り込んで丸くなっている私の頭を抱え込むよう体を寄せて、細々と嘆息。
いっそ引っ張り出してくれればいいのに。
ずるずる上掛けの中へ引きこもうとしたら逆に剥かれた。まぁそれで大人しく抱き込まれてくれるなら構わない。
「ちょっと、」
「んー…」
「…鬱陶しいよ」
口でなんと言おうがそれに見合う攻撃がなければ説得力に欠ける。抱き込んだままの体勢で落ち着こうとしても暴れる素振りさえ見せないのだ。
「なぁ、恭弥?」
「…なに」
「好きだよ」
「だから?」
「大好き」
「寝ぼけてるの」
「愛してる」
「…知ってるよ」
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