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 一年中狂い咲いたまま。絶えることなくはらはらと花弁(はなびら)を散らす。銀木犀の根方。苔生した地面へ転がっていると、遠くからそっと近付いてくる気配に気付いた。
 杜(もり)がささめく。

「よう」

 月はなく、闇の深い夜だった。

「不当な侵入だよ。これは」
「入れねぇようにもできたんだろ」

 妖(あやかし)ものの目にはさして関わりのない。

「ここはあんたの杜だ」

 渾々と水の湧く小さな泉の畔(ほとり)。ぬらりひょんの孫は無防備な様子で立っていた。

「出入りする者の選別などいちいちするものか」

 私は私で、四肢を投げ出したまま。ようやく開けた目さえまたすぐに閉じて息を吐く。

「具合でも悪いのかい」
「疲れているんだよ」
「何故」

 帰り血塗れの服を替えることさえ億劫だった。

「人が私に願うのだ。あれをしろこれをやれ。おかげでおちおち遊び呆けてもいられない」

 厚く地面を覆う苔の上。足音もなく近付いてきたかと思えば脇腹の辺りへ触れてくる。次に腕。

「返り血だよ」

 どちらもおびただしく血に塗れている場所だった。

「…ひでぇざまだ」
「べたべたするよ」
「綺麗な髪が台無しだぜ」

 やんわりと撫でられた髪には乾いた血がこびりついてしまっている。

「血の臭いがしねぇのは奇妙だな」

 鉄臭さだけを花の香りが隠していた。

「そうかい?」

 だから余計に眠くなっていけない。





(花葬風月/華と夜。おうせ)
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