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 フルベは生きながら死んでいるのだと、名もない少女は言った。
 名も身寄りもない、どこにでも転がっている孤児。道端に座り込む少女にはこれといってフルベを惹きつける要素はなかったが、かけられた不躾な言葉よりその内容に、フルベはほんの少しだけ興味を示す。



「お前、名は?」



 少女は首を振った。名などありはしない、と。
 フルベは少女が首を振る――または名の存在を否定する――ことを知っていた。一目見たときから、少女が孤独なことには気付いていた。



「あなたは、生きながら死んでいる」



 他人の事などその辺の小石ほどにも思っていないフルベの歩みを止めた言葉をもう一度口にして、少女はフルベの足元に目を落とす。



「あなたは、殺されながら生きている」



 今度は言葉の意味が違った。



「それで? お前には何が見える?」



 つ、と伸ばした手で薄汚い少女の顎を持ち上げ、フルベは微笑んでみせる。
 計算されつくした容貌に浮かぶ艶やかな笑み。――少女は目を閉じた。



「真紅よ。哀しい人」










(ならばそう、せめて安らかに眠れることを祈っておくれ)
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