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 長い銀髪を風にそよがせ、眠たげに瞬いていたラヴィーネをディオスが抱き上げる。
 漸く定位置に戻った少女はすぐに眠りへと引き込まれ、ややもしないうちに、小さな頭はディオスの肩に頼りきりとなった。
 そうしている様はまさに人形。だが残念なことに彼女には自我があり、これが本来の姿ではない。むしろ人形じみた彼女を抱いている自分こそが傀儡だ。


「ねぇ、ディオス」
「はい?」


 移動の揺れで一々起きるほど繊細とは言い難い彼女は、今にも落ちてしまいそうになる瞼をなんとか押し留め、煩わしげに身を捩る。
 自らの欲求には常に忠実である彼女らしからぬ行動だ。


「人間になりたかったら、そう言っても良いのよ?」


 腕の中の温もりが完全に意識を手放すと、確かな重みだけが残される。


「僕が、人間に?」


 嗚呼でもそれは、きっと許されないことなのでしょう。眠り姫の騎士は主の眠りを妨げぬよう、王子でさえも殺してしまいなさいと、命じたのは他ならぬ貴女。それを為し得るのはひとえに僕が人形であるからだ。主に貰った心と体と、主の剣で戦う僕は所詮「愚かな道化[オーギュスト]」。貴女の眠りは守れても、貴女を目覚めさせることなんてできない。


「そんなこと言わないで、ラヴィーネ・・・」


 僕は傀儡、貴女の人形。どうかいらないなんて言わないで、眠り姫。


「僕はここにいたいんだ」

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