02.
薄暗い廊下を歩いていると、まるで世界にあたし独りしかいないような錯覚に捕らわれた。きっとどこかから聞こえてくるブラスの練習さえなければ、あたしは耐えられなくなってしまうだろう。――だからといって逃げられるわけでもないのに。
(曇ってる、なぁ・・)
空だけを映せる幸運な窓は、今日に限ってとても不幸な窓だった。厚く垂れ込めた灰色の雲が、あたしの気分を底なし沼へど引きずり込む。それでも、窓から目を逸らし誰もいない世界を見る気にはなれず、あたしは憂鬱な気分を加速させるように重い息を吐き出した。
(雨降りそう)
いつまで気付かない振りが出来るのだろう。
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