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「おはよう」
「…おはよう」

 往生際悪く残された温もりにしがみつけるだけしがみついてからリビングに顔を出す。対面式キッチンのカウンターにはいつも通り二人分の朝食が用意されていた。

「「いただきます」」

 意図せず言葉が被る事は珍しくない。その気になれば苦もなく一挙手一投足合わせられる私達だ。寧ろ完全にタイミングを外す事の方が難しい場合もある。

「ごちそうさま」
「お粗末さま」

 ようやく眠気との折り合いがついてきた私は、朝食の片付けが終わるまでに自分の仕度をして、戸締り確認。携帯と財布がポケットに入っている事だけ確かめて玄関に回る。

「恭弥」

 勿論、途中で学ランを拾ってくる事も忘れない。

「珍しいね」
「そうでもないよ」

 単独行動の予定がない日の私は大抵セーラー服だ。別に珍しくなんてない。久し振りではあるけど。

「今日は歩いて行こうか」
「そうだね」

 ただの気紛れで、気分の問題だ。
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