触れた場所から溶け合っていく夢を見た。二つに分かれた卵が元の一つに戻る夢。
「なんて悪夢を見るんだい、君は」
飛び起きた私にかかるのは、心底辟易しきった恭弥の声。まったくねと肯定しようとして、自分の呼吸が喋る事もままならない程乱れている事に気付いた。
「おかげで目が覚めたよ」
ゆっくり、ゆっくり、促すように汗ばんだ私の髪を恭弥が梳く。早鐘を打っていた心臓は、程なく恭弥の鼓動と同調した。
「ふー…」
柔らかいベッドに背中から倒れ込むと、――ごそり――恭弥の両手はさっさと私を挟み込んで動かなくなる。
「まだ三時だよ」
「うそぉ」
「嘘じゃない」
いつの間にか身動きとれなくされていて、諦め混じりの息を吐く。本当はもう寝るような気分じゃないのに、混ざった体温が心地よくてついついうとうととしてしまう。
「今度はもっとマシな夢見なよ」
「どんな…?」
「少なくとも君と僕がいる夢。――あとは自分で考えなよ」
「なら恭弥が見ればいいのに」
わかってるだろ。――その言葉は音にはならず、恭弥は私の首元へ顔を埋める事で会話を打ち切った。
「おやすみ、恭弥」
「ん」
今度こそ、よい夢を。
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