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「調子はどうだい? シュア」
 久しく立ち寄っていなかった〝アジト〟に足を踏み入れると、室内は相変わらず殺風景で、壁に設置された幾つかのモニターだけが室内を照らしていた。
<変わりありません>
 入り口正面にあるコンソールに向けて一歩踏み出して漸く、天井の照明に光が入る。
「相変わらずケイオスの壁は厚いか」
<同じアンダーグラウンドと言っても、各階層は全くの別世界ですから>
「ここからフラウに行くのも、アクセスするのも容易いというのに、上が下になっただけでこれでは堪らないな」
 床に描かれた蝶の真上を通り過ぎ、たった一つしかない椅子に落ち着いた。
<最近は特に、です。数ヶ月前までは、ケイオスの表層までなら侵入できていました>
「ハルカ君がまた何か面白いことをしているんだろう。彼は、過程を見られるのを酷く嫌う」
 モニターを流れていく情報を見るともなしに見ながらそっと笑みを含む。
 ハルカは完璧主義者だ。そして同時にアンダーグラウンドの支配者でもある。
<続けますか?>
「もちろんだよ」
 けれど万能ではない。
「この世界の全てが記されたオーパーツ、『蝶』を手に入れるためならどんな苦労も惜しまない。――そうだろう?」
<はい>
「いつもケイオスの相手ばかりだと疲れるだろうから、たまにはヴィルやフラウの方ものぞいてみるといい」
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