「――バッカじゃないの」
酷く可笑しそうに、酷く不愉快そうに、吐き捨てるとルナはさりげなく俺に半歩近づく。
「ママに毒された匣でパパが倒せるわけ、ないじゃない」
それはどこかそうなることを願っているような言い方で、俺は小さく眉根を寄せた。
「手、出すと後が怖いぞ」
「文弥に言われなくてもわかってる」
「…怖い?」
すぐそばにあるルナの手を取る。いつもより少しだけ、冷たい。
「怖くなんてない」
「そう」
握りすぎて手の平を傷付けないよう指を絡ませてやると、二人の距離はいっそう縮まった。ぴったりとよりそって、まるで温めあう雛鳥のよう。
「もし、ルナがどうしても我慢できなくなったら、その時は…」
「…その時は?」
ほんの少しの期待が、ルナの瞳によぎる。でもそれは既に全てをわかりきっている勝利者の目にも見えて、俺は声を立てず笑った。
「二人で父さんに怒られよう」
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