――ここだよ
「・・・また聞こえた」
頭の中に直接響くような、それでいて不快感を感じない〝声〟。
手をかけた扉の向こうに探るような目を向け、暁羽は開けるか否かを躊躇した。
選択肢は既に絶たれている。
「祝いなんて・・白々しい」
オートロックのランプが赤から青に変わった。暁羽は扉を引く。何の抵抗もなく扉は開くが、その一寸先はまさしく闇だ。――卑弥呼の寄越すものにろくなものはないという嫌な確信だけが、思考の中で渦を巻く。
どうか最悪の事態だけは避けられるようにと、暁羽は祈った。
――従え
「・・・」
初めて目にする本当の世界は酷く眩しかった。
けれど不思議と、あの単色の世界に還りたいとは思わなかった。
「だれ・・だ」
鮮やかに色付き、輝く世界。私の中にはなかった彩色が、私の中へと流れ込む。
「おまえは、」
光を求めたことはないはずだった。闇に在れば、傷つけられることもないから。
「お前は、誰だ?」
なのに私は、ここに在り続ける事を望んだ。
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