薄暗い室内に一人。
床に染み付いた血は既に赤黒く変色し、それが流されてから相当の時間が経っているという事実を、女に教えた。
つまりそれは、女がこの場所をつきとめ訪れるために費やした労力や時間が、全て無駄になってしまったということ。
「・・・はぁ・・」
らしくないと、その場に女を知る者がいれば言っただろう。誰よりも女自身が一番よくわかっていた。溜息なんて、らしくない。
けれどそれを禁じえないのは、水泡に帰したものがあまりに大きすぎるからだ。
「ヴルカーンの奴、帰ったら覚えてろよ」
半ば八つ当たり気味にそう吐き捨てると、女は銜えていた煙草を落とし、苛立ちを紛らわすようにそれを踏み潰した。
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