僕たちはいつだって一緒にいる。どんなに離れていたって、本当の意味で二人が離れ離れになることはない。何故なら僕の本体は君の左手に輝いていて、周囲が僕だと認知している体は仮初のものにすぎないから。
「……」
目を通していた本のページを捲る指先が小さく震え、本体との間に奇妙な隔たりを感じた僕は意識を本体へと向ける。ルーラとの見えない繋がりを辿って行き着いたのは、見たこともない隠し部屋。ルーラと彼女に対峙するもう一人の少女。
<どちら様?>
いつかこうなることは分かっていたから驚きはしない。けれどそれが僕のいないところで起きたことで、僕は彼女と離れたことを後悔する。一緒にいればまんまと誘い込まれるようなこともなく、彼女が望むとおり今年中は息を潜めていられたのに。
「仕方ないな…」
力負けすることはないと分かっていても、僕は行動せずにいれない。一度目を閉じもう一度開いたときには視線は随分と下がり、ついさっきまで読んでいた本がソファーの下に転がっている。ルーラがミスティーと呼ぶ黒猫の姿からさらに意識を離し、僕は指輪の外で存在を保つために行使していた魔力を解いた。
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