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「――私を怒らせたわね」

 手を当てた胸が熱を持つ。行動の浅墓さとは裏腹に言葉は冷静だった。何をどうすればいいのか、考える前に体が動く。心臓と同じ位置に埋め込まれた《災いの枝》に対して、言葉は必要なかった。
 もはや、私と彼女の意思に境は無い。私は彼女で彼女は私だ。私の意思は彼女の意思。またその逆も時としてあるのだから、私は衝動のままに力を揮う事を躊躇いはしない。

「魂に直接苦痛を刻んであげる」

 私自身を鞘とする《災いの枝》は、抜き放たれた瞬間その禍々しい力を顕にした。血色の刀身を艶やかに煌めかせる剣の纏う魔力が、何よりも強く場を支配する。呼吸さえ許さない圧迫感は、相手の力量次第でそのものが直死の凶器だ。

「天を統べる神ではなく私の名の下に、裁きなさいレーヴァテイン」

 たとえそれに耐えたとしても、振りかざされる刃から逃れる術は無い。
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