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時系列順で保存しとけばよかった
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全部まとめてあげたかったけど字数制限とかあるかんね
:賢者の石
1-01:the dawn [始まり]
1-02:Darkness [闇]
 1-02a:覆す事はいつだって出来る
 1-02b:力を頂戴
 1-02c:来訪者
 1-02d:手に入れたもの
1-03:Result [結果]
1-04:Determination [決意]
1-05:Chain [鎖]
1-06:Ideal [理想]
1-07:in the dream [夢の中]
1-08:Letter [手紙]
1-09:Encounter [邂逅]
1-10:Crow [クロウ]
1-11:Master [主人]
1-12:Key [鍵]
1-13:Necessity [必然]
 1-13a:再会にして出会い
1-14:Fate [運命]
1-15:Indifference [無関心]
1-16:Silverstone [シルバーストーン]
1-17:Paramnesia [既視感]
 1-17a:集う血族
1-18:Secret [秘密]
 1-18a:組み分け帽子の歌
 1-18b:血統
1-19:Disappoint [裏切り]
 1-19a:血を持たない血族
 1-19b:隠された狡猾さ
1-20:Supreme [至高]
 1-20a:聞こえない雑音
1-21:Window [窓]
1-22:Twins [双子]
1-23:Prison [牢獄]
 1-23a:塗り重ねられる仮面
1-24:Silence [沈黙]
1-25:Halloween [ハロウィーン]
 1-25a:ノルン
1-26:Declaration [宣言]
1-27:Ripple [波紋]
 1-27a:投げられた采
 1-27b:悪夢
1-28:Pain [痛み]
1-29:Reason [理由]
 1-29a:終末の夜



「――私をおいて逝く気か」

 血を流す右目に痛みはない。ただ視界は赤く濁っていて不快だ。

「アッシュ・オフィーリア」

 床に伏したアッシュは既に呼吸を止めている。死んでいるのだ。サラザール・スリザリンによって造られた人造人間の最高傑作は、もういない。

「…馬鹿が」

 いくら呼んでも応えない。何をしても応えない。――死ぬというのはそういう事だ。だからもう、この男に用は無い。力は残された。力さえあれば私の望みは果たされる。契約違反は無い。――なのに血が止まらないのは、何故だ。

「――アリア」
「ルーラ…」
「何があったの?」
「マリアに殺された」
「マリア、って…アッシュと同じホムンクルスの?」
「あぁ」
「…哀しいの? アリア」
「わからないんだ」
「取り戻してあげましょうか」
「……どうやって?」
「引きずり出すのは私の専門よ」
「死者は蘇らない」
「さぁ? どうかしら」
「出来るのか」
「貴女が心の底からそうなる事を望んでいればね」


----


「ルーラ」
「なぁに?」
「ありがとう」
「気にしないで。善意じゃないから」
「わかってるよ」


----


「天邪鬼が二人」
「仲良くしてたら誰かさんが妬くじゃない」
「誰の事だろうね」
「誰の事でしょうね」


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「この、大馬鹿」


----


 私の殺されたハートレス。


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 しめやかな聖夜を貫いた感情が私を揺り起こす。

「行くの?」

 その感覚を気のせいだと切り捨てる事は出来そうになかった。

「呼ばれちゃったから」

 物理的な距離も、隠れ家の結界も超えて真直私の胸に飛び込んできた哀しみを放っておく事は出来ない。作り物の絆に縋っているのは私も同じだから。

「一緒に来てくれる?」
「…いい加減、聞く必要ないって気付きなよ」

 どうしたって、見捨てられない。


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「このままで来たの、やっぱりまずかったかしら」
「仕方ないよ。いくら君だってあの封印をしたままホグワーツに姿あらわしするなんて危険すぎる」
「四人一遍だったし?」
「それもあるよ」


 目が覚めたら不思議の国でした。なんて、笑えない冗談だ。





「おはよう」

 紅い目をした黒猫が、私に目覚めを促す。
 長い尻尾をぱたりぱたりと動かしながら可愛らしく首を傾げてみても、猫は猫だ。

「いつまで寝てる気なんだい?」

 私はハッ、と短く息を吐いて、遅ればせ目を丸くする。

「猫が喋ってる…」

 恐る恐る手を伸ばすと、ルビーアイの黒猫はくつくつと喉を鳴らした。――笑ったのだ。

「別に噛みついたりしないよ」

 初めて聞いた《猫の笑い声》に、私は動きを止める。すると黒猫はおかしそうに目を細め、私の手の下に自分から体を滑り込ませてきた。

「っ――」

 手を引く間もない一瞬のことに、私は思わず悲鳴を呑み込む。
 当の黒猫は、素知らぬ顔で距離を詰めてきた。柔らかい毛並みが手の平をすり抜けた次の瞬間、首元に温もり。

「おはよう」
「――あ、れ?」

 何かがおかしいと気付いたのは、その時だ。
 見たこともない部屋の見たこともないベッドの上に横たわっている《私》が誰なのかを、私は思い出すことが出来ない。物心ついてから今に至るまでの記憶の中で、自分自身の存在だけがぽっかりと抜け落ちているという、異常事態。
 ひやりと、冷たい手で心臓に直接触られたように、鼓動が止まる。自分が今息を吸っているのか吐いているのかさえ分からなくなって、胸をつかんだ。
 寒いのに熱いような、痛いのにこそばゆいような、苦しいのに気持ち良いような、奇妙な感覚が全身を駆け巡る。
 自分が見ているものが何なのかすら、私にはもう分からなかった。

「ルーラ」

 寒いのに熱いような、痛いのにこそばゆいような、苦しいのに気持ち良いような、奇妙な感覚が私を閉じ込める。

「ルーラ・シルバーストーン」

 二本の腕。薄い唇。優しい声とほど良い体温。――宝石のような、一対のルビーアイ。

「それが君の名前だよ。――《ルーラ》」

 たった今夢から覚めたみたいに、意識が覚醒する。
 それまでの混乱が嘘のようだった。一呼吸ごとに心が軽くなっていくのがはっきりと分かる。
 心臓へ触れた手に、温もりが戻った。

「もう平気?」
「う、ん…」

 大丈夫、と答える声が掠れていることに気付いて、差し出されるグラス。どこから取り出したのかも分からないものなのに、口を付けることへの抵抗は感じなかった。
 背中に添えられた手の動きに合わせて、まだほんの少し揺れていた心が綺麗に凪いでいく。グラスに半分ほど注がれた水を飲み干す頃には、私はすっかり落ち着きを取り戻していた。
 やんわり取り上げられたグラスは、私の視界の外で大気に溶ける。

「もう一度眠るといいよ」
「どうして…?」

 その時既に、私の瞼は落ちかかっていた。見下ろしてくるルビーアイに魔法でもかけられたように、体から力が抜ける。

「眠って、起きたら、全部わかるから」

 ずぶりと、意識の沈む音が聞こえたような気がした。

「おやすみ、ルーラ」





 ――おやすみ、私の――





(ようこそアリス/終わらない夢の世界へ)


「トリックオアトリート! お菓子をくれなきゃ咬み殺すわよー」

 ばたん、と開かれた扉の向こうにはいかにも楽しそうな顔をしたイツキが一人で立っていた。

「…ツッコミ待ちですか」
「いいえマジです」

 室内には骸とアリスの二人きり。もっとも自分たち以外の誰かがいれば頭に猫耳なんてつけて現れはしないのだろうと、骸は諦め半分に自分の片割れを顧みた。

「いいじゃないかハロウィンだし」

 なんとか言ってやってくださいよ、と懇願混じりの視線はあっさりかわされる。

「帰っていいですか」
「恭弥ー。骸が咬み殺して欲しいんだってー」

 そんなハロウィン。

「雲雀君にも仮装させたんですか…?」
 エリカ・シモンズが何かのついでで調整したらしいオートバイを試運転も兼ねて私用で乗り回していたら、途中で思わぬ知人と出くわした。

「なにそれコスプレ?」
「フィーラさん…」

 アスラン・ザラ。ラクスのヘタレた婚約者だ。さすがにここで「どうして《モルゲンレーテ》の制服なんて着てるの?」とか、そういう答えづらい質問をして困らせてやろうと思うほど私も意地悪じゃない。
 まぁわざわざ呼び止めてまで接触を持った時点で相当な意地悪ではあるけど。これくらいはルクスだってたまにやってることだ。

「一人?」
「あの…」
「あぁ、いいのいいの。答えられないって分かって聞いてるから。独り言だと思って聞き流して」
「はぁ…」
「その代わり私のことも内緒にしてね。いいこと教えてあげるから」
「いいこと、ですか…?」
「いいこと、よ」
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