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 銃を使って人を殺すのはあんまり好きじゃなかった。簡単すぎてつまらないから。だけど今はもうそんなこと思わない。そもそも人殺しに楽しみを求めること自体間違っていたんだ。

「Addio――」

 決別を囁いて、指をかけた引き金は軽い。構えた銃の向こうで散る命の重さなんてそれ以上だ。私にとって何の価値もない。不要だから殺すのだ。
 乾いた発砲音は装弾数きっかりで途切れ、下がったスライドが戻らなくなる。弾切れだ。マガジンを変えないままストップに指をかければスライドが戻りはしても中は空のまま。構わず引き金を引くとあるはずのない銃声が空気を震わせた。幻覚だ。それでも人は死ぬ。もし幻覚に耐性のある人間が紛れていたとして、その時は有幻覚を使えばいいだけのこと。問題はない。

「――――」

 最後の一人を仕留めて深呼吸。手を離した銃は地面に落ちる直前霧散した、これも幻覚。初めから本当の武器なんて何一つ持ってはいなかった。まるきり手ぶら。なのに襲撃してきた男たちの、なんてだらしないこと。丸腰の女一人相手に全滅だなんて。

「Buonanotte」

 笑い話にもなりやしない。

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