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小噺専用
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「――面白いものを見せてもらったよ」

 何の前触れもなく――いや、これこそが前触れ――落ちる声。切り裂かれ、悲鳴じみた金切り声を上げながら抉じ開けられる空間。私は知っている。
「…イヴリース…」
 この発現を。
「久しぶりだな、ゼロ・ナンバーズ」
 私の髪よりも透明度の高い銀糸が、それ自体発光しているかのように輝く。トレードマークともいえる不敵な笑みを浮かべ、イヴリースは死に掛けの大地へと降り立った。
「随分と永い事眠っていたにしては、調子よさそうだな」
 それだけで世界がざわつく。
「……どうしてここに?」
「いちゃ悪いのか?」
 深い眠りへと身を委ねているはずの和斗でさえ、彼女の接近に身じろいだ。
「心配しなくても、お前の大事な〝御主人様〟に手を出したりしないさ」
「貴女は気紛れよ」
「否定は出来ないな。…だが私の胸の内がどうであれ、お前に私を止めること出来ない。違うか?」
 容赦なく体温を奪う雨は彼女と私たちだけを避けて降り注ぐ。彼女がそうしているのではない。そう、させているのだ。
「……いいえ…」
 触れることすら躊躇われる、不可触の女神。
「ならそう気を張るな、疲れるだけだぞ」

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