「よせ」
珍しく余裕のない声だと、思った。恭弥らしくない。恭弥はいつだって、余裕ぶっていてくれた方がいい。私は、そんな恭弥が好きだから。
「ごめんね恭弥。でも、他に方法が見つけられないの」
ペンダントの指輪に火が灯る。真っ黒な炎。結局私がこの指輪を嵌めることはなかったけれど、きっと、相応しい主が現れるから大丈夫。
「我侭だって分かってるけど、私のこと忘れないでね?」
「忘れる、わけがない」
「ありがとう」
だんだんと、私という存在を構成するナノマシンが結合を解いていく。体の末端からじわじわと、私が私でなくなっていくのがはっきりとわかった。
「大好きよ恭弥」
でも、これで、貴方とあの子達が生きられるのなら――
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