伸ばした手で掴める物なんてほんの僅かだ。
「ルナ」
あたしは知ってる。
「そろそろ行こう」
ちゃんとわかってる。
「ルナ」
腕を掴まれて半ば引きずられるように立ち上がり、私はぼんやりと文弥に目を向けた。
文弥の手は私の腕を伝い下りて――するり――指が絡まる。
「泣くなよ」
「泣いてない」
「父さんがいい顔しない」
「文弥よりは優しく慰めてくれる」
「慰めてほしいのかよ」
鼻で笑っているような、呆れているような、驚いているような顔で、文弥は言った。
私ははぐらかすようににっこりと嘘っぽく笑う。
「俺達は二人で一人だろ」
「…10点」
守れるのは自分の命と、あとは多分、たった一つだけだ。
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