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「母さんっ!!」



 けたたましい音を立て扉が開いた。
 ベッドの上でうつ伏せていたサクは顔を上げ視線を彷徨わせる。



「・・・何?」



 漸く視界に入った愛娘はソファーの側に仁王立ちしていた。



「ゲストチームの一人ってあれ南野だよ! 同じクラスの!!」
「そうだね」
「そうだね、って・・知ってたの?!」
「ミナミノクンが妖怪だって事? それともこの試合に出てるって事?」
「っ」



 シャワーを浴びたまま放置していた髪はもう乾いてる。



「じゃあ、母さんは全部知っててここに来たの?」
「千尋は何が嫌なの? 私が貴女のクラスメイトを殺すこと? それとも貴女に彼のこと何も言わなかった事?」
「嫌とかそういう問題じゃ・・」
「ごめんね」



 どうしてこの髪が茶色いのか、どうして鏡に映る私の瞳は黒いのか。



「私ね、千尋に言ってない事沢山あるの」



 その理由はとても大切。だってその理由がなければ私はここにいられない。



「だけど信じて? 私は千尋の嫌なことはしないから」



 伏せられたサクの視線と揺らいだ妖気に千尋は息を呑んだ。
 やめて。擦れた声で呟いて、小さく一歩後退[アトズサ]る。



「千尋?」
「母さんさっきからおかしいよ、何でいつもみたいに軽くあしらわないの? 小百合さんの事だってホントは一緒にいたくないくせに」
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