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「っ」

 バラバラ バラバラ

「どうして・・」

 バラバラと、その音が聞こえる。

「・・・」

 月に憧れた獣の咆哮が途絶えた。
 ルヴィアはつい数秒前までその声が轟いていた建物を遠目に見やり、近付いてくるヘリの音に耳を澄ます。

「ルヴィア」
「違う。啼き止んだんじゃない、途切れたのよ」

 頭を抱えルヴィアは蹲った。
 バラバラとヘリの羽音が近付き煩さを増す。

「死んだのよ。だって――」

 うわ言の様に虚ろな瞳で呟くルヴィアを抱え上げ、柘榴は紫苑に視線を投げた。
 小さく頷き紫苑は地を蹴る。

「血の匂いがするもの」
「ルヴィア」

 耳元で囁かれルヴィアは視線を上げた。
 柘榴はゆっくりと首に手を回すよう促し、ルヴィアを抱えなおすと紫苑を追う様に自らも地を蹴る。

「ハンターがいるのよ。いいえ、殺戮者が」

 遠い過去で嗅いだ事のある鮮血の香。

「?殺す者??殺すことのできる者?」
「ルヴィア、黙って」
「また来るわ。今度は打ち砕きに」

 全てを見下ろす月が目に付いた。
 バラバラと聴覚を侵すヘリの音。鮮血の香。轟いては途切れる獣の咆哮。

「柘榴、紫苑っ」
「大丈夫。ここにいるよ」

 無人の建物に入り込み柘榴はルヴィアを抱く腕に力を込めた。
 一足先に二人を待ち受けていた紫苑が奥への扉を開け、ルヴィアの世界に漆黒が落ちる。

「柘榴?」
「おやすみ、ルヴィア。ここなら何もルヴィアを苦しめない」

 分厚い壁は月光を遮り、ヘリの羽音を遠ざけた。
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