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「お前それ騙されてるって、絶対」

 その時話題に上っていた友達とはパソコンでだけ繋がってるのだと聞いて、授業以外パソコンに触れたことのない、そう親しくもない昔のクラスメイトはそう言った

「嘘つかれてるってこと?」
「そうそう、絶対騙されてるって」

 お前バカだよなー

「嘘、ねぇ」

 目の前の机に頬杖をついたまま、私は口角をつり上げる
 まずい。と、そういう雰囲気を出しながら一緒に来ていたアヤは組んでいた足を解き、落ち着きなく膝の上で指を組んだ

「どうして、そう思うの?」

 視線は窓の外に流し、隣の棟にあるの2年のクラスを覗き見る

「そんなの決まってるだろ? だってパソコンだったら嘘つき放題じゃん」

 冬だというのに閉めきられたカーテンは、窓を閉ざし身を寄せ合うこのクラスとの立地条件の違い
 去年までいた所謂古巣は、けれど私がいた頃カーテンを閉ざしはしなかった

「お前、人の心が読めるとか言われて思い上がってんだろ? バッカみてー」

 日の光で勉強しようと誰ともなくカーテンを開けた

「ちょっと、時雨にそういうこと言わないでよ」
「その呼び方だって、なんだよシグレって。お前冬木達には違う名前で呼ばせてんだろ」

 眩しいからと閉めようとする者はいなかった

「冬木達は関係ない。だって、あれはただの友達だから。私の心はしらなくていい」
「なんだよそれ。お前、自分が特別だとでも思ってんの?」
「やめなさいって!」

 集団でいたい。一人になりたくないと

「大体お前クラスにいるときなんでアヤと一言も話さないんだよ。知ってんだぞ! アヤとは他人だとか冬木達に言ってんだろ!?」

 ガタンッ

「・・・だって、冬木達と一緒にいる私はシグレじゃないでしょう?」
「それがおかしいって言ってんだよ!」

 誰も発言力のある女子に逆らいはしなかった

「さっき、私が騙されてるって言ったよね?」
「あぁそうだよ! お前は騙されてる、それにお前も騙されてるんだ。アヤ! 冬木達も他の奴らもみんなっ!!」


「バカな奴」


「はぁ!?」
「ちょっと時雨も、挑発とかそういうことやめてよ! 教師が気付く」
「この部屋防音」
「っ、あんた解っててやったの!?」

 一人では何もできないのに

「そっちの物差しで計るのはやめて、不愉快どころの騒ぎじゃない」
「スカしてんなよ!」

 集まって集まって、その場の流れに呑まれ短絡的な決定を下す

「そっちこそ、何? 正義の味方にでもなったつもり? 他人を騙す悪の化身を追及するの? B級映画にもなりゃしない」
「んなことっ・・」

 過ちに気付いても気付いても、全てをひた隠しまた過ちを繰り返す

「それが嘘かどうかは本人が決める事。ネットでしか繋がっていないのなら、それが私とあいつの真実。冬木達の前ではもう一人の私が真実。アヤの前では、今の私が真実なのよ」
「は?」
「人は全てに平等じゃいられない。わかるでしょ? 誰かの全てを他人が知ることはできないのよ。知ろうとするなら、その人は覚悟しなければならない」
「お前言ってることの意味・・」

 解っていてもやめられない。走り出したら、止まらない

「人は誰しも他人を裏切りながら生きるのよ」
「お前言ってることの意味わかんねー、それって騙してもいいってことかよ」
「騙してなんかないのよ。その人の口で語られることは全て、真実なのだから」
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