「寝ないのか?」
「うん」
見上げた月に手を伸ばしても届く事はない
あれは見た目よりもずっと遠い所にあって、どうやったって俺達の手に入りはしない
「ねぇ、ユエ」
「ん?」
「あれをちょうだい」
けれどお前は望むのか
「・・・あぁ」
蝋の翼で太陽へと羽ばたいた勇者は翼を焼かれ地に堕ちた
「ちょっと待ってな」
「うん」
精巧な細工のグラスを手に取り、指を弾き鳴らせば現れる水
重みを増したグラスを窓枠に置き、背後のテーブルに何も言わず手をついた
「ありがとう」
お前が堕ちてしまわない様に、俺はここに月を飼おう
うっとりと頼りなく揺れる月を見つめるお前は、すくなくとも俺の傍にいる
月を手に入れられないことには変わりはない。けれど――
「どういたしまして」
物欲しげ月を見上げるお前は、いつかあそこに帰ってしまいそうだから
お前がここにいられるよう、俺はここで月を飼おう
「うん」
見上げた月に手を伸ばしても届く事はない
あれは見た目よりもずっと遠い所にあって、どうやったって俺達の手に入りはしない
「ねぇ、ユエ」
「ん?」
「あれをちょうだい」
けれどお前は望むのか
「・・・あぁ」
蝋の翼で太陽へと羽ばたいた勇者は翼を焼かれ地に堕ちた
「ちょっと待ってな」
「うん」
精巧な細工のグラスを手に取り、指を弾き鳴らせば現れる水
重みを増したグラスを窓枠に置き、背後のテーブルに何も言わず手をついた
「ありがとう」
お前が堕ちてしまわない様に、俺はここに月を飼おう
うっとりと頼りなく揺れる月を見つめるお前は、すくなくとも俺の傍にいる
月を手に入れられないことには変わりはない。けれど――
「どういたしまして」
物欲しげ月を見上げるお前は、いつかあそこに帰ってしまいそうだから
お前がここにいられるよう、俺はここで月を飼おう
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真っ青な海に一輪の花を捧げ、冬星は目も眩む様な断崖絶壁に背を向けた。
「O come, thou Wisdom from on high.」
波の合間に聞こえた歌声を辿る。
「And order all things, far and nigh.」
歌声は途切れる事も、波音に掻き消されることもなく高らかに響き続けた。
「Fill the whole world with heaven's peace.」
アルビノじみて白い髪が駆け抜ける風に攫われる。
「Repeat Chorus――」
人の心を惑わすセイレーンの歌声にも似たそれは、冬星がこじんまりとした教会の扉を押し開けると同時に途切れた。
「なんだ、やめたの?」
鮮やかなステンドグラスから射す日の光に照らされ、十字架の前に跪いていた綺羅[キラ]はすっ、と立ち上がる。
「歌い終わったのよ」
整然と並べられた長椅子の最後列に冬星は腰を下ろした。
「では、白き乙女の為に鎮魂歌を」
十字架を仰ぎ、遮られた太陽に手を伸ばし、何かを請うような表情で綺羅は目を閉じる。
「In paradisum deducant te Angeli,」
天使たちが貴女を天国に導いて下さいますように、
「in tuo adventu suscipiant te martyres,et perducant te in civitatem sanctam Jerusalem.」
貴女がそこへ着く時、貴女を殉教者達が出迎えて、貴女を聖都エルサレムへ導いて下さいますよう。
「Chorus Angelorum te suscipiat,et cum Lazaro quondam paupere,aeternam habeas requiem――」
天使の群れが貴女を出迎え、かつて貧しかったラザロと共に、貴女も永遠の安息を得られますよう。
いなくなってしまった貴方に再びめぐり逢えますよう――
私はここで謳います。
「O come, thou Wisdom from on high.」
波の合間に聞こえた歌声を辿る。
「And order all things, far and nigh.」
歌声は途切れる事も、波音に掻き消されることもなく高らかに響き続けた。
「Fill the whole world with heaven's peace.」
アルビノじみて白い髪が駆け抜ける風に攫われる。
「Repeat Chorus――」
人の心を惑わすセイレーンの歌声にも似たそれは、冬星がこじんまりとした教会の扉を押し開けると同時に途切れた。
「なんだ、やめたの?」
鮮やかなステンドグラスから射す日の光に照らされ、十字架の前に跪いていた綺羅[キラ]はすっ、と立ち上がる。
「歌い終わったのよ」
整然と並べられた長椅子の最後列に冬星は腰を下ろした。
「では、白き乙女の為に鎮魂歌を」
十字架を仰ぎ、遮られた太陽に手を伸ばし、何かを請うような表情で綺羅は目を閉じる。
「In paradisum deducant te Angeli,」
天使たちが貴女を天国に導いて下さいますように、
「in tuo adventu suscipiant te martyres,et perducant te in civitatem sanctam Jerusalem.」
貴女がそこへ着く時、貴女を殉教者達が出迎えて、貴女を聖都エルサレムへ導いて下さいますよう。
「Chorus Angelorum te suscipiat,et cum Lazaro quondam paupere,aeternam habeas requiem――」
天使の群れが貴女を出迎え、かつて貧しかったラザロと共に、貴女も永遠の安息を得られますよう。
いなくなってしまった貴方に再びめぐり逢えますよう――
私はここで謳います。
「サクラ姫の羽根を持った領主、ね」
「聞かれますよ」
「誰に?」
庇で柱に寄りかかりながら「Bloody moon」を煽っていたカーティアは、姿を現したヘルガにさして気にしたふうもなく「君こそ見つかるよ」と警告ともつかない言葉をかけた。
「見つかると困りますか?」
「いいや」
事も無げに首を横に振り、空になった杯を満たす。
「別にどっちでもいいんだよ」
「・・・」
その様子を庇に立ったヘルガは必然的に見下ろすような形になり、凝視してくるその視線に気付くとカーティアは紅い液体で満たされた小瓶を庇に置いた。
「ヘルガ?」
俯けていた顔を上げ、心持ち首を傾ける。
「戻りましたね」
「何がだい?」
漆黒と見紛う程に深い紺色の瞳に映る自分の姿を目に留め、ヘルガは軽く目を伏せると緩く首を振った。
「何でもありません」
そして音もなくカーティアの中へと戻る。
残されたカーティアは小さく笑いを噛み締めながら目を細めた。
「そうかい?」
全てお見通しだと言わんばかりの視線はどこかここでない遠くを見つめているようで底知れない。
掌中の杯から「Bloody moon」が消え失せると小瓶ごと杯を消し、カーティアは柱に寄りかかったまま片膝を立て、そこに腕を乗せると目を閉じた。
「じゃあそういうことにしておこうか」
意識は漆黒の海へ。
「聞かれますよ」
「誰に?」
庇で柱に寄りかかりながら「Bloody moon」を煽っていたカーティアは、姿を現したヘルガにさして気にしたふうもなく「君こそ見つかるよ」と警告ともつかない言葉をかけた。
「見つかると困りますか?」
「いいや」
事も無げに首を横に振り、空になった杯を満たす。
「別にどっちでもいいんだよ」
「・・・」
その様子を庇に立ったヘルガは必然的に見下ろすような形になり、凝視してくるその視線に気付くとカーティアは紅い液体で満たされた小瓶を庇に置いた。
「ヘルガ?」
俯けていた顔を上げ、心持ち首を傾ける。
「戻りましたね」
「何がだい?」
漆黒と見紛う程に深い紺色の瞳に映る自分の姿を目に留め、ヘルガは軽く目を伏せると緩く首を振った。
「何でもありません」
そして音もなくカーティアの中へと戻る。
残されたカーティアは小さく笑いを噛み締めながら目を細めた。
「そうかい?」
全てお見通しだと言わんばかりの視線はどこかここでない遠くを見つめているようで底知れない。
掌中の杯から「Bloody moon」が消え失せると小瓶ごと杯を消し、カーティアは柱に寄りかかったまま片膝を立て、そこに腕を乗せると目を閉じた。
「じゃあそういうことにしておこうか」
意識は漆黒の海へ。
「名前は?」
「・・・沙鬼」
「部屋は?」
「初等部寮の三階、舞風暁羽の部屋の向かい」
「同室なのは誰?」
「一人部屋」
隣を歩きながら指折り質問してくる暁羽を暫し見つめ、沙鬼は軽く息を吐いた。
「うん、まぁこのくらいかな」
「私はお前の何だ?」
「うん? 誕生日の日付的には姉かなぁ、同い年だけど」
「・・・」
「沙鬼?」
「なんでもない」
人目を避けるようにこの街に来た。
人目を避けるように寮に入って、数日後には、全てが整っていた。
自分はこの巨大学園都市「彩光学園」の理事長であるリカコの孫娘――正確には本当の孫娘が拾ってきた養女――で、今日から初等部の3年に編入する。
去年まではイギリスにいた。・・らしい。
「変な金持ちだな」
「私のこと?」
「他に誰がいる」
天涯孤独だった私に家族が出来たのが暁羽に会った翌日。今まで過ごしてきた時間と記録が出来上がったのはさらにその翌日。
今朝暁羽に渡された資料の中にある電話番号に連絡すれば、私がイギリスに居る間暮らしていた家につながり、そこの家族が「また遊びにおいで」と温かい言葉をかけてくれるらしい。勿論、英語で。
「私を助けてお前になんの利益がある」
「それ、昨日も一昨日も聞いた」
暁羽は右手に持っていた鞄を左手に持ち直し、しびれた右手をヒラヒラと肩口で振る。
「でも私はまだ答えを聞いてない」
「私が答えてないからね」
「はぐらかすな」
怒気をはらんだ声と共に立ち止まった沙鬼を顧みる暁羽の顔に、表情はなかった。
「っ」
まるで人の手によって造られたかのような、計算されつくした完璧な無表情。
「それはね、」
唇が動いていないような錯覚すら覚える。
そうだ。これが、あの時私が暁羽の手を取った理由。
命が惜しかったわけじゃない。だた、逆らえなかっただけ。
「銀の狼が欲しかったから」
漆黒の瞳に逆らう意思を奪われた。
「傷ついた獣を手懐けるのも、一興だと思っただけ」
ふいと逸らされた視線に思わず肩の力を抜く。
ふとした瞬間垣間見える支配者の顔に出逢う度戦慄した。そしてこれからもし続けるのだろう。
「・・・そうか」
私は鎖で繋がれてしまった。だからもう二度と逆らう事は許されない。
「・・・沙鬼」
「部屋は?」
「初等部寮の三階、舞風暁羽の部屋の向かい」
「同室なのは誰?」
「一人部屋」
隣を歩きながら指折り質問してくる暁羽を暫し見つめ、沙鬼は軽く息を吐いた。
「うん、まぁこのくらいかな」
「私はお前の何だ?」
「うん? 誕生日の日付的には姉かなぁ、同い年だけど」
「・・・」
「沙鬼?」
「なんでもない」
人目を避けるようにこの街に来た。
人目を避けるように寮に入って、数日後には、全てが整っていた。
自分はこの巨大学園都市「彩光学園」の理事長であるリカコの孫娘――正確には本当の孫娘が拾ってきた養女――で、今日から初等部の3年に編入する。
去年まではイギリスにいた。・・らしい。
「変な金持ちだな」
「私のこと?」
「他に誰がいる」
天涯孤独だった私に家族が出来たのが暁羽に会った翌日。今まで過ごしてきた時間と記録が出来上がったのはさらにその翌日。
今朝暁羽に渡された資料の中にある電話番号に連絡すれば、私がイギリスに居る間暮らしていた家につながり、そこの家族が「また遊びにおいで」と温かい言葉をかけてくれるらしい。勿論、英語で。
「私を助けてお前になんの利益がある」
「それ、昨日も一昨日も聞いた」
暁羽は右手に持っていた鞄を左手に持ち直し、しびれた右手をヒラヒラと肩口で振る。
「でも私はまだ答えを聞いてない」
「私が答えてないからね」
「はぐらかすな」
怒気をはらんだ声と共に立ち止まった沙鬼を顧みる暁羽の顔に、表情はなかった。
「っ」
まるで人の手によって造られたかのような、計算されつくした完璧な無表情。
「それはね、」
唇が動いていないような錯覚すら覚える。
そうだ。これが、あの時私が暁羽の手を取った理由。
命が惜しかったわけじゃない。だた、逆らえなかっただけ。
「銀の狼が欲しかったから」
漆黒の瞳に逆らう意思を奪われた。
「傷ついた獣を手懐けるのも、一興だと思っただけ」
ふいと逸らされた視線に思わず肩の力を抜く。
ふとした瞬間垣間見える支配者の顔に出逢う度戦慄した。そしてこれからもし続けるのだろう。
「・・・そうか」
私は鎖で繋がれてしまった。だからもう二度と逆らう事は許されない。
「――!!」
「―――」
階下から聞こえるくぐもった声は、それが怒声だとはっきり分かるのに内容がわからない。
かすかに聞こえる言葉を繋ぎ合わせたって無駄。もう誰が何をしようと関係ない。
関係なくなる。
「悲劇のヒロインなんてガラじゃない」
右手に持ったのは何処にでもあるようなツールナイフ。
父さんが私にくれた最初で最後のプレゼント。
「でも、状況だけならそう言えなくもないんじゃない?」
自分自身に嘲笑まじりの問いを投げ、手首にナイフを突き立てた。
動脈を抉るように深く、深く・・
「さよなら、私」
主のいない水槽に腕を浸して目を閉じた。
「今のお前に別れを告げな」
「――・・・」
開け放った窓を背に立った一人の女。
普通ならありえない。だけど、今日ならどんな不思議だって受け入れられるような気がした。
「何しに来たの? 死神さん」
真っ黒い外套に、その隙間から垣間見える鎖。
何て美しい死神。彼女に連れて行かれるのなら、死出の旅路にだって胸が高鳴る。
「言っただろう?」
__ジャラッ..
「俺はお前を掻っ攫いに来たんだよ」
「俺はルーラ。・・まぁ、今は憶えなくてもいいけどな」
霞の様に消え失せた少女。残された漆黒の女。
クツクツと湧き上がる笑いを押さえようともせず、ルーラは足元の水槽を蹴り倒した。
「それにしてもエグい」
広がる、紅。
「〝君〟がやったんだろ?」
いつのまにか自分の背後に立っていた男を顧みる事はせず、フローリングの床に広がった鮮血まじりの水に、ゆっくりと屈み指先を浸す。
「若気の至りさ」
水によって薄められた鮮血が、淡く光を発した。
「――」
「―――!!」
階下からの怒声も、今は取るに足らないものだと思えるのは、流れたときの長さだろうか。
「いい加減黙れ」
放たれた言葉にははっきりとした力が込められていた。
「お見事」
騒がしかった家に静寂が落ちる。
「―――」
階下から聞こえるくぐもった声は、それが怒声だとはっきり分かるのに内容がわからない。
かすかに聞こえる言葉を繋ぎ合わせたって無駄。もう誰が何をしようと関係ない。
関係なくなる。
「悲劇のヒロインなんてガラじゃない」
右手に持ったのは何処にでもあるようなツールナイフ。
父さんが私にくれた最初で最後のプレゼント。
「でも、状況だけならそう言えなくもないんじゃない?」
自分自身に嘲笑まじりの問いを投げ、手首にナイフを突き立てた。
動脈を抉るように深く、深く・・
「さよなら、私」
主のいない水槽に腕を浸して目を閉じた。
「今のお前に別れを告げな」
「――・・・」
開け放った窓を背に立った一人の女。
普通ならありえない。だけど、今日ならどんな不思議だって受け入れられるような気がした。
「何しに来たの? 死神さん」
真っ黒い外套に、その隙間から垣間見える鎖。
何て美しい死神。彼女に連れて行かれるのなら、死出の旅路にだって胸が高鳴る。
「言っただろう?」
__ジャラッ..
「俺はお前を掻っ攫いに来たんだよ」
「俺はルーラ。・・まぁ、今は憶えなくてもいいけどな」
霞の様に消え失せた少女。残された漆黒の女。
クツクツと湧き上がる笑いを押さえようともせず、ルーラは足元の水槽を蹴り倒した。
「それにしてもエグい」
広がる、紅。
「〝君〟がやったんだろ?」
いつのまにか自分の背後に立っていた男を顧みる事はせず、フローリングの床に広がった鮮血まじりの水に、ゆっくりと屈み指先を浸す。
「若気の至りさ」
水によって薄められた鮮血が、淡く光を発した。
「――」
「―――!!」
階下からの怒声も、今は取るに足らないものだと思えるのは、流れたときの長さだろうか。
「いい加減黙れ」
放たれた言葉にははっきりとした力が込められていた。
「お見事」
騒がしかった家に静寂が落ちる。
開いてはいけないよ。
火の海となりつつある住み慣れた家。足音のない男たち。
目前にまで迫る死の腕[カイナ]から、私はどうすれば逃げおおせる事が出来る?
開いてはいけないよ。
何もしなければ背後の足音――もしくは目前の炎――が確実に私の命を奪うだろう。
けれどそう易々と殺されてやるわけにもいかない。
――呼べよ。
だって、そう。
「アッシュ」
私の命は私だけのもの。
「アッシュ・オフィーリア」
なら奴らにくれてやる事なんてない。
「あいつ等を消しなさい!」
そうでしょう?
「――仰せのままに」
私の悪魔。
「いいかい? アリア、決してその本を開いてはいけないよ」
「でも手放してもいけないんでしょ? 父さん」
幼い両腕で抱いた、血の様に紅い装丁の本。
父さんは言った。「それは禁書だからね」と、「それには恐ろしい悪魔が封じられているから」と。
「大丈夫、わかってるよ」
でもね、父さん。父さんは知らなかったでしょう?
「私は絶対にこの本を手放さないし、開いたりもしない」
とっくの昔に封印はとけていたのよ。
「そんなに心配しなくても大丈夫」
だけど私は嘘をついたの。
「大丈夫だよ」
私の悪魔を誰にも奪われたくなかったから。
火の海となりつつある住み慣れた家。足音のない男たち。
目前にまで迫る死の腕[カイナ]から、私はどうすれば逃げおおせる事が出来る?
開いてはいけないよ。
何もしなければ背後の足音――もしくは目前の炎――が確実に私の命を奪うだろう。
けれどそう易々と殺されてやるわけにもいかない。
――呼べよ。
だって、そう。
「アッシュ」
私の命は私だけのもの。
「アッシュ・オフィーリア」
なら奴らにくれてやる事なんてない。
「あいつ等を消しなさい!」
そうでしょう?
「――仰せのままに」
私の悪魔。
「いいかい? アリア、決してその本を開いてはいけないよ」
「でも手放してもいけないんでしょ? 父さん」
幼い両腕で抱いた、血の様に紅い装丁の本。
父さんは言った。「それは禁書だからね」と、「それには恐ろしい悪魔が封じられているから」と。
「大丈夫、わかってるよ」
でもね、父さん。父さんは知らなかったでしょう?
「私は絶対にこの本を手放さないし、開いたりもしない」
とっくの昔に封印はとけていたのよ。
「そんなに心配しなくても大丈夫」
だけど私は嘘をついたの。
「大丈夫だよ」
私の悪魔を誰にも奪われたくなかったから。
「行け!」
大地が唐突に光を放つのと、男が肩に止まった銀の不死鳥を空へと逃がすのとは、ほぼ同時だった。
飛び立った銀の不死鳥は迷う事無く光から逃れるように、遥か上空へと舞い上がる。
「俺も間抜けだな」
光が転じた鎖に手足を絡め取られ、膝をつかされた男は自嘲しながら目を閉じた。
「だが、これで終わりだと思うな?」
闇が爆発する。
「人ごときが」
「アリア」
約束だよ。
「決してあの本を読んではいけない」
「アバダ ケダブラ!」
暗転。
大地が唐突に光を放つのと、男が肩に止まった銀の不死鳥を空へと逃がすのとは、ほぼ同時だった。
飛び立った銀の不死鳥は迷う事無く光から逃れるように、遥か上空へと舞い上がる。
「俺も間抜けだな」
光が転じた鎖に手足を絡め取られ、膝をつかされた男は自嘲しながら目を閉じた。
「だが、これで終わりだと思うな?」
闇が爆発する。
「人ごときが」
「アリア」
約束だよ。
「決してあの本を読んではいけない」
「アバダ ケダブラ!」
暗転。
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