「あら、どうしてだめなの?」
可愛らしく首を傾げる少女は、けれど禍々しい。
仕掛けられた攻撃を軌跡を纏った左手で弾き、ミゥはふらつく足を叱咤した。
「力を遮断されると肉体を保つ事も危ういのね。――なんて脆い」
苦労して取り寄せた甲斐があったわ。
「なんのつもりだ・・」
「そんな声出したって無駄よ? 全然怖くないんだから」
少女の足下に?落ちた?黒猫はピクリとも動かない。
その首筋に埋め込まれ脈打つ種子にミゥは見覚えがあった。確か――
「キィラ」
そう、キィラ。悪魔の体に寄生しその力を糧として育つ植物。
餌にされた悪魔は例外なく力の全てを栄養として吸収され髪一筋さえ残らない。・・文献にはそう記されていた。
「さぁ、どうする? この猫ちゃんから種子を切り離してみる?」
「・・・」
「?風よ、力なき使い手を切り裂け?」
「ッ――」
「な、に・・やってんだよ!」
「チナっ」
「そんな奴ぶっ飛ばせるだろ!?」
足がふらつく。焦点が定まらない。
「最悪だな・・」
「おしまいよ」
まだ家族で旅をしているころの俺と同じ顔、声で、そいつは俺を嘲笑った。
――まだだ
「今度は?炎よ?」
「・・・お前の力は届かない」
そう、あのころと同じ。
「まさかっ・・」
「お前にこの力は使えない」
でも、一つだけ違う。
「風よ切り裂け、千々にだ」
「――ッ!」
たとえどんな姿をしていても、お前は俺じゃない。
「そんな、言霊でもないのに・・」
「エレメントは俺の声に耳を傾けてる」
「貴女に命令される事を待っているですって? 気位の高い精霊達が」
「そうさ。・・目障りだ、消えろ」
「っ」
エレメンタルマスターとして生まれたのは、俺。
「・・・燃やしてくれ、傷つけないように」
黒猫の首筋に小さな炎が灯り、そこに寄生するキィラを焼き尽くした。
ゆっくりと力ない体を抱き上げミゥは息を吐く。
「ミゥ・・・」
「大丈夫。っていうか、お前ら今日のこと忘れろ。眠れ」
もうここが屋外だとかこいつらここに転がしておくわけにはいかないとか、関係ない。
「ルシフェル?」
言葉にして「起きろ」というのは躊躇われた。
力を込めなくてもきっと今俺の言葉はどんな言霊よりも強力な力を持っている。
「ルシフェル・・・」
お願いだから目を開けて、あのときの様に私を一人にしないで。
「随分と信用がないな」
「っ・・」
「泣くのか?」
お前が。
「・・・まさか」
「私が施した封印がガタガタだ。・・いいぞ」
かけなおされた封印に肩の力を抜く。
あの力は危険だ。俺の体がずっと持っていたあの力は、一瞬で全てを破壊する。
「苦しかったか?」
「何、心配してんの?」
お前が。
「ああ」
「・・・大丈夫だよ。俺は死ななきゃ大丈夫」
「そうか」
すっ、と伸ばされた腕の先で転がってたチナたちが消える。
またいつもと同じ黒猫の姿に戻り、ルシフェルは俺の肩に飛び乗った。
「よし、戻って寝るか」
疲れたし。
「にゃー」
失わなければどうでもいい。
可愛らしく首を傾げる少女は、けれど禍々しい。
仕掛けられた攻撃を軌跡を纏った左手で弾き、ミゥはふらつく足を叱咤した。
「力を遮断されると肉体を保つ事も危ういのね。――なんて脆い」
苦労して取り寄せた甲斐があったわ。
「なんのつもりだ・・」
「そんな声出したって無駄よ? 全然怖くないんだから」
少女の足下に?落ちた?黒猫はピクリとも動かない。
その首筋に埋め込まれ脈打つ種子にミゥは見覚えがあった。確か――
「キィラ」
そう、キィラ。悪魔の体に寄生しその力を糧として育つ植物。
餌にされた悪魔は例外なく力の全てを栄養として吸収され髪一筋さえ残らない。・・文献にはそう記されていた。
「さぁ、どうする? この猫ちゃんから種子を切り離してみる?」
「・・・」
「?風よ、力なき使い手を切り裂け?」
「ッ――」
「な、に・・やってんだよ!」
「チナっ」
「そんな奴ぶっ飛ばせるだろ!?」
足がふらつく。焦点が定まらない。
「最悪だな・・」
「おしまいよ」
まだ家族で旅をしているころの俺と同じ顔、声で、そいつは俺を嘲笑った。
――まだだ
「今度は?炎よ?」
「・・・お前の力は届かない」
そう、あのころと同じ。
「まさかっ・・」
「お前にこの力は使えない」
でも、一つだけ違う。
「風よ切り裂け、千々にだ」
「――ッ!」
たとえどんな姿をしていても、お前は俺じゃない。
「そんな、言霊でもないのに・・」
「エレメントは俺の声に耳を傾けてる」
「貴女に命令される事を待っているですって? 気位の高い精霊達が」
「そうさ。・・目障りだ、消えろ」
「っ」
エレメンタルマスターとして生まれたのは、俺。
「・・・燃やしてくれ、傷つけないように」
黒猫の首筋に小さな炎が灯り、そこに寄生するキィラを焼き尽くした。
ゆっくりと力ない体を抱き上げミゥは息を吐く。
「ミゥ・・・」
「大丈夫。っていうか、お前ら今日のこと忘れろ。眠れ」
もうここが屋外だとかこいつらここに転がしておくわけにはいかないとか、関係ない。
「ルシフェル?」
言葉にして「起きろ」というのは躊躇われた。
力を込めなくてもきっと今俺の言葉はどんな言霊よりも強力な力を持っている。
「ルシフェル・・・」
お願いだから目を開けて、あのときの様に私を一人にしないで。
「随分と信用がないな」
「っ・・」
「泣くのか?」
お前が。
「・・・まさか」
「私が施した封印がガタガタだ。・・いいぞ」
かけなおされた封印に肩の力を抜く。
あの力は危険だ。俺の体がずっと持っていたあの力は、一瞬で全てを破壊する。
「苦しかったか?」
「何、心配してんの?」
お前が。
「ああ」
「・・・大丈夫だよ。俺は死ななきゃ大丈夫」
「そうか」
すっ、と伸ばされた腕の先で転がってたチナたちが消える。
またいつもと同じ黒猫の姿に戻り、ルシフェルは俺の肩に飛び乗った。
「よし、戻って寝るか」
疲れたし。
「にゃー」
失わなければどうでもいい。
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