忍者ブログ
小噺専用
80 80 80 80
80 80 80 80
[1]  [2]  [3]  [4]  [5]  [6]  [7
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

「何で泣かないの?」
「だって――」



 泣けないんだもん。
PR
「ダメだよ」



貴方は彼女を殺したのだから、僕は貴方を許さない
許せるわけがない。彼女は僕の全てだったのだから



「でも・・」



返してくれるなら生かしてあげよう
僕に返して、僕の全てだった彼女を



「さぁ、どうする?」



彼女が微笑んでくれるなら僕は何だってするんだ





理[コトワリ]に背く事だって厭わない
彼女はいつも笑っていた



けれどその笑みは彼女と他人との距離が保たれていて初めて振りまかれるものであって、彼女は自分の領域へと踏み込む他人に対して一切の容赦をしなかった
凍てつくような視線を向け禍々しい笑みを浮かべ、そして彼女は言うのだ



「あなたは誰?」



とても楽しそうに、けれど決して無邪気ではない声で
彼の人以外自分の領域へ踏み込むことは許さない。と、存在しもしない想い人に全てを捧げ今日も彼女は笑みを振りまく
楽しそうに、けれど決してその本心を悟らせずに
あの人が纏う安穏な香を私は好んだ
名も知らぬ、知るつもりもないフレグランス
あの人の訪れを私に告げ、同時にあの人がいないことを知らしめる



むせ返るような血の海においてもその存在を主張する香は誰よりもあの人に相応しかった



青い月、血に染まったあの人とフレグランスの香だけが私の意識を引き止めた
「この部屋の匂い、好き」
「なにそれ」

 クローゼットの扉はたてつけが悪い

「愛の告白?」

 小柄なこいつでも着れそうな物を見繕って、あたしはそれをテーブルの上に放る

「そうかも」
「へ?」

 入り口の扉のたてつけも悪い

「大好きです」

 唯一の例外は海の見える広い窓

「だから、私の全てを許してください」
「ちょっ・・」

 そして

「どういうつもり!?」

 そいつはそこから飛んだ
「大丈夫?」

 頬に添えられた手の冷たさに目を細めた。
 大丈夫。喉の痛みを我慢して、白濁としかけた意識を手繰り寄せる。

「熱がある」
「そう?」

 でも大丈夫だから。

「無理に動かないほうがいいよ」

 まだ足音は聞こえない。走り出すのは聞こえてからでも十分間に合う。
 君の体よりも大切なものなんてないんだから。

「駄目。行かなきゃ」
「駄目だよ」

 足音が聞こえてからでは遅い。
 貴方を逃がすことが一番大切なんだから。

「捕まってもまた蹴散らせばいい」

 僕達にはその力がある。

「貴方に傷一つつける訳にはいかない」

 その力を雑魚の血で穢すことも許されない。

「死なないで」「死なせない」

 どうして逃げなければならないのだろうか。
「それとも、オレが生き返らせてあげようか?」

 神なのだから、弄ぶ事に躊躇はしない
Template by Crow's nest 忍者ブログ [PR]