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「イツキ」

 伸ばされた手に応えると、恭弥はストンと意識を手放した。力の抜けた体を抱き抱えると逃がすまいとでもするよう腕が回され、嗚呼これじゃあ動けないじゃないかと私は苦笑する。

「恭弥はイツキにべったりだな」
「たった二人っきりの姉弟だもの」
「…両親は?」
「死んだ」

 私が殺した。

「冗談にしては…」
「本当よ」
「…いつ」
「三歳の時。だってあの人達離婚して私達のこと別々に引き取るなんて言うんだもの」
「恭弥は知ってんのか」
「言ったら貴方を殺す。邪魔する部下も皆ね」
「お前は…」
「無理だと思う? ためしてみる? 私は別にいいけど貴方が死ぬのが一番最後な事だけは覚えておいてね」



「イツキには黙ってるよう言われたが、恭弥。お前には知る権利があると思うから話しておきたい」
「イツキが両親を殺した話なら知ってる」
「なっ…」
「…それとも別の話だった?」
「知ってたのか…」
「イツキが僕の行動を把握してるのと同じ事さ。僕だって彼女が何をしてるかくらい知ってる。分かったならさっさとやろうよ。イツキが戻ってくるまでに少しは動いておかないと怪しまれる」
「恭弥、お前はっ」
「こう見えて必死なんだ」


「僕が強くないとイツキが無茶をする」
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