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 看護婦の悲鳴とともに慌ただしくなった病室の下を、悠々と通り過ぎた

「ちょっと早い、かな」

 予定通りなら、もう5分くらい私の不在に気付かないはずだったのに

「何が早いんだ?」
「・・・誰?」
「通りすがりのお兄さん」
「昨日もここにいたと思うけど?」
「あれ、知ってたんだ?」

 病室の窓から見える公園。いつもベンチに座ってた、男

「今日はどうしてベンチにいないの?」
「退屈だったから」
「いつもベンチでぼーっとしてたくせに」
「君も、病室の窓からぼーっと外を眺めてるよね」
「だって私には何もないもの。だから何もしないで空を眺めてるしか、他にないのよ」
「どうして?」

 病室の、騒ぎが収まった

「・・・ここじゃ見つかるかもね」
「失敗したら貴方のせい」
「それは困った」

 言葉とは裏腹に、楽しげな男は私の手を引いて歩き出す

「だって私に明日はないもの」
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