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小噺専用
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 薄暗い部屋には、蝋燭の明かりが一つだけ灯されていた。小さな炎はゆらゆらと忙しなく揺れて、天井に映る影を生き物のように蠢かせている。
 その影を眺めているうちに、寝起きでぼんやりとしていた頭は徐々に働き始める。まずは起きなくてはと、起こした身体の上を薄手のブランケットが滑り落ちた。

「リドル――」

 ベッドサイドに置かれたスツールは無人。その代わり、枕元で黒い猫が丸まって目を閉じている。

「リドル」

 意識して呼ぶと、黒猫は静かに目を開けて私を見上げた。真紅の瞳には少しだけ不機嫌そうな色が滲んでいる。

「お腹すいた」
「丸一日寝てたからじゃない?」
「何か作ってよ」
「……仕方ないなぁ…」

 起こされたのが不満なのか、黒猫は少し渋るように目を細めてから、本当に仕方なさそうに体を起こした。
 ぐぅっ、と目一杯伸びをして、欠伸を一つ。

「朝まで寝てれば良かったのに」

 ぼやいた黒猫は音もなくベッドを飛び下りて、独りでに開いた扉から部屋を出て行った。扉はまた独りでに閉じて、蝋燭の火が大きく揺れる。

「ひどい」

 
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