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 とめどない、それは数多の情報。
 意識せずに「全て」が入ってくる感覚は、どことなく冷たい。



 そう、冷たいのだ。



 だから俺はさりげなく感覚を閉ざす。
 徐々に徐々に、入ってくる情報を制限して、ゆるやかに自分の首を絞めていく。
 やめろ。危うい存在を警告するケルベロスの言葉も、結局は無視した。



『だーってさぁー』



 きっと俺はこんな冷ややかなものを知る為に生まれた訳ではなくて、きっともっと温かなものを得るために生まれてきたはずで、きっともっと温かなものがこの世界にはあるはずで、



 けれど俺はそれを知る前に消える。



『なんてあっけない』



 オルフィーラの嘲笑がどこか心地良く聞こえた。



































 ――・・・



































『・・・?』


 ありえない。
 俺の感覚は今ギリギリまで絞られていて、滅多な事がない限り、ケルベロスとオルフィーラ以外の声は届かない。



 けれど確かに聞こえたんだ。



 とても哀しい声。
 大切なものを自分の手で壊してしまった哀しみが、冷ややかな情報と共に俺の中へと流れ込んでくる。
 情報は冷たい。けれど、その哀しみは温かかった。



『泣くなよ』



 だからなんとなく感覚を開いてその声の主を探した。
 広大なネット世界でその幼い声は目立つ。
 だって俺のもとに電脳化しただけの人間の声は届かない。最低でも体の半分は義体化していないと、どうしても冷めた情報に音を持った声が掻き消されてしまう。



 ねぇ、あんたはどこにいるの?



『誰?』



 情報の海で凍えた俺を癒す温かな涙の主を、



『誰か・・いるの?』



 俺はその日確かに見つけたんだ。



































「ねぇ素子ー、俺ひまぁー」
「報告書はどうしたの」
「そんなのもう終わったよぉー、提出したよぉー」
「それで?」
「遊び行こうぜ!」



 でもさ、いくら温かくてもその涙は二度と見たくないと、確かにその時思ったんだよ。















(君の笑い声を、聞かせて)
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