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いつからだろう、私が変わっていったのは
いつからだろう、一人が怖くなったのは

昔は平気だった一人でいるということが怖い
昔は平気だった他人と違うことが怖い
皆と同じ振りをして自分を殺さなければならなくなったのは、一体いつからだろう

あなたに逢ってからかな
それともそれ以前?
もしかしたらあなたとは全然関係ないのかも

いつからこんなに臆病になった?
いつから他人の傍にいることが心地よくなった?
一人でいることにたとえようのない不安を感じ
どうして自分を殺してまで作り笑いをしていたいの?

あの頃から変わらないものなんて何一つない
あなたも変わった
きっと私も変わってる
でもなんでこんなに怖いんだろう
二人で変わるなら怖くないと思ってた
でもやっぱり私が臆病なのは変わらない
だってそうでしょう?

一緒じゃなきゃ変われない

いつからこんな風になっちゃったんだろう昔は違ったよね
私は独りだった一人で独りだった。あなたは違った
いつからこんな風になっちゃんたんだろう、もしかして私だけかな
あなたは昔から変わらなくて私だけが変わっちゃったのかな

一緒にいたかった
だから他人と違うことが怖かった
一緒にいるために自分を殺した
でもそれは本当に私があなたの傍にいるための最良?
最良が最善ではないんだよとあなたは言うけど、私にはわかんないよ

どうすればよかったんだろう、答なんてないのに
どうするべきだったんだろう、もう終わっちゃうのかな
一緒にいるのは本当に楽しかったんだよ
でも同じくらい苦しかった
離れている時間が長くてそうじゃない時間はあっという間で
一人でいることが怖かった
傍にいてって言えたらよかったのに

きっと私たちの最善は私の考える最良とは程遠かったんだね
だから私は一人が怖くてあなたのいない部屋で泣く
あなたの最善はどうだったのかな
もしかして本当は、最初からうまくいく方法なんてなかったのかもしれない

おはようもおやすみも一緒にしてきた
あなたのいない場所で私は息の仕方さえ忘れる
はじめましては憶えてないけど
さよならだけは絶対に忘れないでいられそう

〝さようなら〟

あなたと離れたって私が生き返ることなんてないのにね
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「ねぇ文弥、ママ知らない?」
「部屋にいないなら父さんの所だろ」
「あ、そっか」
「…行かないのか?」
「こっちくるとき草壁見かけたもん。二人っきりなら邪魔しちゃ悪くない?」
「別にお前は平気だろ」
「文弥は平気じゃないの?」
「俺はそんな恐ろしいこと出来ない」
「意気地なし」
「……行ってくれば?」
「いーの、それに文弥一人だと寂しいでしょー?」
「別に」
「まったまたぁ」


「そういえばさぁ、ニュース見た?」
「何の」

 道が坂道に差し掛かって、会話は自然と途切れた。不意に思い出した昨夜のニュースを再開のきっかけにして、俺たちはまた無駄な体力を垂れ流す。わかっていてもやめられない。

「人が鏡の中に引きずり込まれるってやつ」
「……ニュース?」
「ちゃんとしたニュース番組だよ。二時間ある番組の前半一時間は政治問題とかやってて、後半一時間はたまにツチノコとか探してる。で、昨日はアリス事件の特集組んでた」
「アリスって、鏡の国のアリスの?」
「ナニソレ」
「…続けてくれ」

 初めて会話の内容に興味を示した那智に、俺は昨日テレビで仕入れた情報をなるべく要領よく説明した。今世間を騒がせている奇妙で物語じみた出来事、通称アリス事件。多くの人は家出だの誘拐だの言ってるけど、人が鏡に引きずりこまれたのを見たって人もいる。

「それで――「ストップ」

 突然、制止の声と共に口元に手をかざされ、俺は立ち止まる。

「…ナニアレ」

 僕たちはいつだって一緒にいる。どんなに離れていたって、本当の意味で二人が離れ離れになることはない。何故なら僕の本体は君の左手に輝いていて、周囲が僕だと認知している体は仮初のものにすぎないから。

「……」

 目を通していた本のページを捲る指先が小さく震え、本体との間に奇妙な隔たりを感じた僕は意識を本体へと向ける。ルーラとの見えない繋がりを辿って行き着いたのは、見たこともない隠し部屋。ルーラと彼女に対峙するもう一人の少女。

<どちら様?>

 いつかこうなることは分かっていたから驚きはしない。けれどそれが僕のいないところで起きたことで、僕は彼女と離れたことを後悔する。一緒にいればまんまと誘い込まれるようなこともなく、彼女が望むとおり今年中は息を潜めていられたのに。

「仕方ないな…」

 力負けすることはないと分かっていても、僕は行動せずにいれない。一度目を閉じもう一度開いたときには視線は随分と下がり、ついさっきまで読んでいた本がソファーの下に転がっている。ルーラがミスティーと呼ぶ黒猫の姿からさらに意識を離し、僕は指輪の外で存在を保つために行使していた魔力を解いた。

貴方がくれた命なの
だから貴方のために捨てることなんて怖くないわ

貴方のためだけに存在しているんだもの
貴方の手となり足となり共に朽ち果てるまで傍にいる

でも、貴方が要らないというのなら潔く死を受け入れる
貴方が邪魔だといえば大人しく姿を消す
だから命じて、私の命を繋ぐ人

たった一言でいいから

 レイチェルがはっと息を呑む音がはっきり聞こえた。
「リドルおま「レイチェル」…っ」
 彼女の怒りに満ちた声はルーラによって遮られる。立ち上がりかけていたレイチェルは、荒々しくソファーに沈んだ。
「……」
「大人気ないぞ、レイチェル」
「…何でそうなった」
 不貞腐れきった顔をしてそっぽを向いていたレイチェルの視線が、もう一度ルーラと、彼女を支えるリドルへと向けられる。
 ルーラは少し先の床を見つめていた。
「大丈夫よ」
「俺は! …そんな言葉が、聞きたいんじゃない…」
「本当に平気だから、気にしないで? …リドル、戻ろう」
「…つかまって」
 レイチェルのドロドロとした感情が空気を震わせる。ルーラとリドルが姿を消し、二人きりになった部屋の居心地の悪さにサラザールは顔を顰めた。
「放っておけ」
「…お前は大丈夫だっていったじゃないか、サラ。あの部屋に入れば、かけられた呪いはすぐ、に…」
 暖炉を見つめていた視線が徐々に見開かれ、やがて驚愕に染められた瞳がサラザールに向けられる。
 呆れをにじませた表情で小さく頷き、サラザールは交わった視線を逸らした。
「気付いたなら、どうすればいいかわかるな?」
「……」
「あいつらの問題だ。私たちがしてやれることはない」
「……もう寝る」
「あぁ、おやすみ」
 交わらない視線、虚ろな瞳を見て痛々しいと、なんとかしてやりたいと思ったのはレイチェルだけではない。けれど、何もしてやれることはないのだ。
「…私もお前も、まだ、無力なのさ」
 その原因が魔法ではないのなら尚更。

 抱きしめてくれる腕の中で、この腕が一番好き。
「リドル…」
 私だけの腕、私だけの温もり、私が独占できる唯一のもの。
「遅いわよ…」
 痛いくらいに抱きしめてくる腕が伝えるのは、温もりと不安、僅かな安堵と…沢山の後悔。
「私をいつまで待たせるつもりだったの?」
 離れなければ良かったと、震える腕が痛々しい。――私が欲しいのはそんなものじゃないのに。
「ルー、ラ…」
「泣いてるの? リドル」
「…まさか」
「そう」
 おはようと言って。あの悪夢は終わったのだと、私はもう独りではないのだと、告げて。
「気分はどう?」
「平気よ、リドルがいれば」
 この暗闇を終わらせて。
「……」
「リドル?」
「僕は…」
 私の不安を取り去って。
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