「あの方の目は、磨き上げられた宝石。一切の感情を映さず冷やかで、だからこそ至上」
ノスリヴァルディと名乗った巨人族の女は、どこか危うげな雰囲気をその身に纏っていた。
「けれどこの頃、稀に血が通う」
その理由を、私は知らない。
「だから、なに?」
知りたくもなかった。
「まだ分からないの?」
流れる風が狂気を孕んで頬を撫でる。
「――貴女がっ」
感情のままに解き放たれた魔力は鋭く熱を生んだ。お気に入りのワンピースに赤い花が咲く。
くすりと笑みを浮かべながら、私は言葉より早く魔力を放った。
「リーヴが初めてくれた服だったのに。――どうしてくれるの?」
たった一筋、頬につけられた傷の代償は千の痛み。赤い花どころか全身を真赤に染め蹲るノスリヴァルディは、悲鳴すら上げられない。――あらかじめ声帯を切っておいたからだ。
「死んで」
とどめの一撃を放とうと、腕を振り上げた私の視界からノスリヴァルディが消える。《空間転移》したのだと気付いて後を追おうとしたら、魔力を練り上げるより早く腕を掴まれた。
「深追いはよせ」
いつの間に現れたのか、全ての元凶が静かに告げる。
「…止めるなんて初めてね」
いつだって私のする事に口出しなんてしないのに、今日は一体どうしたんだろう。
興味半分不審半分、薄く笑って魔力を収めた。
「深追いすると怪我をするぞ」
「もうしてる」
そう言って頬を撫でると、そこにあるはずの傷がない。ただぬるりとした血の感触だけが残っている。
「いつの間に…」
「これで追う理由はないな」
「そんなに殺されたくないの?」
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