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「定時連絡。ターゲットは未だ行動を起こさず。――ってか見張ってる意味あんの? あいつ一人じゃ何にも出来ないんだろ?」

 ケラケラと笑いながら、少年は足元のペットボトルに手を伸ばす

『一人じゃな』
「何それ意味しーん! じゃあ何、あいつに仲間でもいんの?」
『当然いるさ。だからちゃんと見張ってろよ』
「了解了解。じゃあ今度アヤカに何か差し入れさせてよ」
『交代の時にでもな』
「やたっ」

 会話中一度も目を離さなかった双眼鏡の先には、一人の少女がいた

「でもなー、こう動きがないと俺退屈ー」
『・・3時間後アヤカを行かせる』
「りょーかい、じゃあね」

 真白い病室にたった一人、昼間はいつも読書読書読書

「何か起きないかなー」





「・・・」
(どうしたの?)
(お前には関係ないな)
(なにそれ)
(あえて言うなら?俺たち?の客だ)
(・・・へぇ)
「どうする?」





「うっわ」

 反射的に双眼鏡から目を離す

「目、合っちゃったよー」





(どう、って?)
(監視されてる。まぁ、この病室に移ってからだけどな)
(この病室って・・一昨日? 何それなんで言ってくれなかったの)
(すぐ消えるかと思ってた。それに・・)
(こんなとこにいるからそうは手出しできない?)
(ああ)
(でも狙撃されるかもよー? この病院窓広いし)
(・・お前は死ぬかもな)
(そっちなら避けられるって? おかしいな、身体能力一緒なはずなのに)
(病弱なのはお前のキャラだろ)
「まぁ、ね」





 Loneliness
 孤独なつがいと誰かが言った
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「泣きたいのはこっちだよ」

 呟いて、くしゃりと髪を掻き上げた
「・・・あはっ」

 場違いな、笑い

「うそだろ・・」
「ウソジャナイサ」

 とめどなく溢れる鮮血に手をひたし、ウィッチクイーンはふわりと宙に浮き上がった

「君は見事僕に怪我を――いや、僕の腹に風穴を開けることに成功した」

 爪先は、地面から30センチほど離れている

「でも、まだ足りない。それどころか、君は最大のミスを犯した」

 ダッテボクニケガヲオワセタ

「僕を殺すつもりなら」

 ダッテボクニチヲナガサセタ

「一撃で、クビヲハネナケレバナラナカッタノニ」

 黒く染まる
「邪魔するなら死ね」

 振りかざした刀を何のためらいもなく振り下ろし、ついさっきまで会話していた同族を斬り捨てる

「あー怖い」
「・・殺されたいか」
「ざーんねん、俺は斬られたくらいじゃ死なないね」
「切り刻んでやる」

 ぐちゃり。と、刃を抜かれた肉塊が湿った音を立てた

「や、ミンチになったらさすがに死ぬから」

 軽々と塀の上から飛び降り、男は抜き身の小太刀をひらつかせる
 ザクッ。と、地を踏みしめる音が空気を振るわせた

「あれ、お客さん?」
「・・・」
「どこ行くのさ」

 手放された刀が光の粒子と化し掻き消える

「まかせた」
「げー」

 深い深い地の底で、光を知らぬ子が笑う

「ま、いいけどね」

 赤いナミダを拭わず笑う

「俺は楽しいし」

 その手を真っ赤に染めながら
「・・ケガをしたのか」
「してない」

 赤黒い染みの広がった衣をまとい、それでも尚立ち上がる

「死ぬぞ」
「死なない」

 痛みに顔を歪め
 ふらつく足を気力で支え

「そこまで来るとただのバカだな」
「なんとでも言えばいいさ」

 ただただ歩き続けようとあがく

「だが、気高い」

 いつまでもいつまでも

「当然」

 傷一つない顔で不敵に笑いながら
「もしかしてずっと待ってた?」

 かけられた声に顔を上げ、アサギは首を傾げる

「イザ?」
「声だけですよ、イザ様はまだ・・着きました」

 カゲツの声と共に白銀の汗衫が翻り、築地塀を飛び越えたイザが庭に降り立った

「冷えるよ、アサギ」
「今日は待っていたかったの」
「・・・カゲツ」

 ふわりとアサギを抱き上げ、カゲツはイザが押し開けた妻戸をくぐる 手早く着替えを済ませ、イザはアサギが横たわる茵の脇に腰を下ろした

「体の調子は?」
「大丈夫」
「だからって無理したら・・」
「大丈夫。無理じゃないから」

 ニコニコと笑いながらアサギはイザの袂をしっかりと握る
 それを視界の隅にとめ、イザは立てた片膝に寄りかかった

「なら、いいよ。おやすみ」
「おやすみなさい、イザ」

 夜がじわりじわりと深さを増す
「サクヤ、もういい」

 冷めた声で呟き、イザは片手を上げた。

「きりがない、一気に片付ける」

 風が、凪ぐ。

「その束縛解き放て、月光華」

 軽く握られた手の平に、細く月光が差し込んだ。

「来い。――黒蝶」
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