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残酷な言葉ばかり遺された



「ルヴィア」



とても残酷な言葉ばかり



「ルヴィア、そろそろ行こう」
「・・・柘榴」
「ん?」





「私は大丈夫だから」





「そうだね」



墓のない貴女の為にレクイエムを奏でよう
小高い丘の上、空に届くよう高く遠く



「行こう」
「持つよ」
「大丈夫」



遺された楽器。遺された騎士
【Silver Rose】とくくるには全てが大きすぎる



「でもね、ヴィヴィアン」



絶望が最果てだとは思えない



「私が生きるから」



それに私達は這い上がれる



「だから――」



いつも、いつでも
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離れても大丈夫だから。と



ワタシハワラッテ
アナタモワラッタ



たった一枚の紙切れで生まれる?繋がり?
今までずっと一緒だったのに、どうしてそんなもの必要としたのか、今でも分からない



タダアナタハワラッテイテ
ワタシハコウカナホウセキヲクダイテ



仕事柄指輪は邪魔だったから、二人とも鎖を通して首から下げた
離れていても大丈夫。それは当たり前なのに大切なこと



ダッテワタシハマダタニンガコワクテ
ヒトノケハイガアッテハネムルコトモデキナイ



離れなければならないのなら、離れていても繋がっている証を
繋がりを証明したいのなら、法的な手続きもしよう



ワタシハドウシヨウモナクワガママデ
アナタハドウシヨウモナクワタシニアマクテ



ごめんなさいごめんなさい
ただ私が眠るまで手を握っていてくれませんか
そうすればきっと眠る事も出来るから
「――・・・」



 小奇麗な天上が目についた。



「俺は・・」



 しかも見覚えのある。



「起きたのかい?」
「ドクター・・」
「覚えてるか? あんた撃たれたんだよ」
「・・俺が?」
「そう、あんたが」



 カーテンの隙間から顔を覗かせたドクターは自分の腹を指して笑う。



「あんたは運がいいよ。さすがキングだね」
「今までで一番近いな」



 また傷跡が増えた。



「・・・西の坊主共に感謝しな、あいつらあんたを見つけるのがもう少し遅かったら、あんたは死んでたよ」
「ここじゃいつどこで誰が死んだって不思議じゃない」
「あんたはまだここに必要だ」
「そーだな・・」



 撃たれたのは三回目。一回目は運良く当たらなかったけど二回目は足を掠めた。



「次は心臓だ」
「心臓に風穴開いたら治療は無理だからね」
「分かってるって」



 俺の命を狙って何が楽しいんだか。



「今日くらい大人しく寝ときな、どうせ外は雨だ」
「あぁ」
「大丈夫、一日くらいあんたがいなくてもガキ共はちゃんとやるよ」
「うるせぇな、寝かせろ」



 下手糞な狙撃手のせいでまた死に損ねた。





 ――死にたいの?





「ぇ?」



 耳をすませば激しい雨の音が聞こえる。
 幻聴か?



「まさか」



 ――迎えに来て



「・・・聞こえる」



 ――私を



 音もなくベッドを降り側にあった上着を羽織った。
 音を立てればドクターに気付かれる。だから、いつにもまして慎重に窓を開ける。



 ――迎えに



 ここが三階だとかどうでもよかった。
「キング」
「今行く」



 皆に尊敬され敬われていたあの人はもういない。



「どこだ?」
「西地区だよ。あいつらお前の忠告なんて全然聞いてないんだぜ」
「かまわねーよ、死なせてやれ」



 ガキ共が持ち込んだ銃の暴発であっけなく死んだ。



「連れはいらねぇ。お前ら南に回れ、上が出たら・・」
「わかってるって、我等がチルドレンキング」
「絞め殺すぞ」



 だから今は俺がキング。
 あの人の後を継いだ訳じゃない、周りがそう決めた。俺は最年少のチルドレンキング。この薄汚いスラムの王。



「・・・雨か」



 だからここは俺の国。



































 ――私を呼んで



































「ッ――」



 憶えのある音が轟いた。
 降りしきる雨の中俺は本当の孤独を知った。
 帰る家も迎える家族もなく、灰色の空はそんな俺を嘲笑う。



「なぁ、本当に人間も元は幻獣[ゲンジュウ]の仲間なのか?」



 そんな問いにスラムキングは笑顔で頷いた。
 けれど【幻獣】の血を持つのは【旧人類】だけで、自分たち【新人類】はその恩恵を授かる事が出来なかったのだ。と、どこか寂しそうに。
 俺たちは所謂【新人類】。進化した種。
 けれどそれは違うのだとスラムキングはガキ共に語る。【幻獣】と共に生きることが出来なくなった俺たちはいずれ滅んでこの大陸からいなくなる。
 それは明日かもしれないしずっと未来の話かもしれない。



「だが忘れてはいけない」
「もったいぶんなよ」
「幻獣は自らを信じる者の呼び声になら必ず応えてくれる」
「へー」



 年老いたスラムキングはこの世界の【異常】だった。
彼女はいつも笑っていた



けれどその笑みは彼女と他人との距離が保たれていて初めて振りまかれるものであって、彼女は自分の領域へと踏み込む他人に対して一切の容赦をしなかった
凍てつくような視線を向け禍々しい笑みを浮かべ、そして彼女は言うのだ



「あなたは誰?」



とても楽しそうに、けれど決して無邪気ではない声で
彼の人以外自分の領域へ踏み込むことは許さない。と、存在しもしない想い人に全てを捧げ今日も彼女は笑みを振りまく
楽しそうに、けれど決してその本心を悟らせずに
あの人が纏う安穏な香を私は好んだ
名も知らぬ、知るつもりもないフレグランス
あの人の訪れを私に告げ、同時にあの人がいないことを知らしめる



むせ返るような血の海においてもその存在を主張する香は誰よりもあの人に相応しかった



青い月、血に染まったあの人とフレグランスの香だけが私の意識を引き止めた
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