誰に認められることも求めずに。マイネは寝食を忘れるほど趣味へと没頭し続けた。それだけが生きる意義であるかのよう。そうしなければ生きてもいられないかのよう。手に入る限りありとあらゆる機械を破壊することによって理解しようとし続けた。そうしていつしか飽き足らず、始めてしまった。壊すために生み出すことを。破壊のための創造を。
過ちの初めはどこか。
「マイネ」
呼ばれて起きる。起きて初めて、眠り込んでいた自分に気付く。
目覚めたマイネは顔を顰めた。母譲りのあまりに整いすぎた容貌を。くしゃりと歪め、惜しみなく負の感情を垂れ流す。
「いやなゆめをみた」
「どんな?」
慰めるよう髪を梳かれて目を閉じた。マイネは夢の中でのことを反芻してから息を吐く。深々と。まったく嫌な夢を見たとばかりに。
「どこの馬の骨とも知れない人工知性に体を乗っ取られたトルメキアが話しかけてくる夢」
「それは災難だったわね」
「……」
さも真摯に慰めの言葉をかけてくる――つい先程調整を終えたばかりの新作アンドロイド――未だ名もなき少女に、マイネが真実慰められることはない。何故ならようやく終えた調整は体本体のものであって、組み込むプログラムのものではなかったから。
それは動くはずのない体。
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工藤マイネは自分の《子》に感情を与えようとはついぞ考えたことがなかった。それはとても残酷なことだと思っていたし、何よりマイネが得意なのは「機械弄り」であって、純粋な機械へ感情を与えるようなことは神の領分。人がどうこうしようと努力してどうにかなるようなものではないのだとさえ考えてもいた。
《子》を動かすために必要なのはプログラム。定義したプロトコルに忠実な文字の羅列。その中でどれほど「人間」のように振舞わせようとそれは所詮「そう」定められているからに過ぎず、またマイネもそれが正しい有り様だと考えていた。機械は機械。マイネはけして、「人」を作ろうと望み《子》を造ったことはなかったから。《子》とはただそれだけの存在で構わなかった。
「こんにちは」
だからそれが予定にない音(ノイズ)を発した時。マイネはその音階が「言葉」であるということさえ咄嗟には理解できず、立ち尽くし声を失った。
理解したくもなかったのだ。
「マスター」
壊すため生み出す大切な《子》に、心が宿る残酷さなんて。
(糸断つ傀儡/解体屋と創造物。はんらん)
《子》を動かすために必要なのはプログラム。定義したプロトコルに忠実な文字の羅列。その中でどれほど「人間」のように振舞わせようとそれは所詮「そう」定められているからに過ぎず、またマイネもそれが正しい有り様だと考えていた。機械は機械。マイネはけして、「人」を作ろうと望み《子》を造ったことはなかったから。《子》とはただそれだけの存在で構わなかった。
「こんにちは」
だからそれが予定にない音(ノイズ)を発した時。マイネはその音階が「言葉」であるということさえ咄嗟には理解できず、立ち尽くし声を失った。
理解したくもなかったのだ。
「マスター」
壊すため生み出す大切な《子》に、心が宿る残酷さなんて。
(糸断つ傀儡/解体屋と創造物。はんらん)
工藤マイネ
工藤新一の実姉。趣味の機械弄りが拗れ独学でアンドロイドを製造するに至った鬼才。その過程で生まれた感情を持つ非人間にあらゆる面で世話を焼かれる駄目人間。実家で同居中の弟には何故か恐れられている。小学校の入学式以来学校には通ったことがない。母の美貌を惜しみなく受け継いだ、抜き身のナイフじみて危なっかしいお嬢様。どこにいても否応なく人目を惹くが近寄り難い雰囲気を持つ。本人は割とゆるい。
アラヤ
マイネが構築したシステムへ自然発生的に生じた自我。表向きにはマイネが開発した「アンドロイドのテスト用AI」とされている。「1.マイネを守る」「2.1に反しない範囲で自己を守る」「3.1と2に反しない範囲でマイネの命令に従い、最大限その利益を守る」という独自の三原則を持つため、マイネ以外には全くと言っていいほど従わない。マイネにもそれほど従わない。
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