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「殺せると思う?」

 自分の隣で斜に構えたまま状況を見守る柘榴に一度視線を向け、紫苑はまた目の前の攻防へと向き直った

「どっちがだ」
「サフィアがルヴィアを、ルヴィアがサフィアを」
「無理だろうな」
「俺もそう思う」

 ルヴィアは血の繋がった弟を殺さない
 サフィアはルヴィアを殺すことができない

「ヴィヴィアンが関わらない限り、どちらも死なない」
「何かあるのか」
「別に?」

 考えの読めない笑みを浮かべ柘榴は肩に掛けたヴィオラケースを引き上げた
 紫苑は小さく息を吐きサフィアとルヴィアの攻防に背を向ける

「紫苑?」
「何かあったら呼べ」
「?何か?って?」

 クツクツとさも可笑しそうに柘榴は喉を鳴らした
 立ち止まりもう一度深く息を吐くと、紫苑はまた歩き出す

「さぁな」

 勝ち目のない戦い
 挑ませるは黒の騎士
 どう足掻こうと隠せぬ迷い
 裏切りの蒼に残されるは死

 裏切り者の騎士は――
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「ヴィヴィアンは僕に自分が死んだらシュバルツに頼れって言ったんだ。別に頼らなくても生きていけるけど、する事ないから今は従ってる」

 片手でクルクルと抜き身のサーベルを回しながらサフィアは肩を竦めた

「そんな理由だけど、僕はシュバルツに従うと決めた」

 そして、しっかりと柄を握り締める

「決めたからには絶対服従。だから・・」

 その切先は、真っ直ぐにルヴィアへと向けられた

「僕はあんたを殺す」
消え失せてしまえばいい
ルヴィアを傷つけるもの全て
「生きてね。ずっとずっと、私の分まで」

 残されたのはたった一つとても残酷な願い。俺達も望む、だけど彼女以外誰にも叶えられない願い

「柘榴と紫苑のためにも。サフィアとシュバルツも、きっとそれを望むから」
「ヴィヴィアン・・」

 優しい嘘をつかないで

「そんな顔しないで? 私はずっと貴女の側にいるから」

 俺たちはルヴィアの生を望む

「ずっとずっと、ルヴィアの中にいるから」

 だけど望まない

「だから大丈夫」

 ルヴィアの生が

「私を殺して? ルヴィア」

 ヴィヴィアンの名に縛られることを

「ッ――」

 ?一緒に死んで?
 ヴィヴィアンがそう望めば、どんなによかっただろう
 共に死に、全てを温かい思い出と化すことを望めば――
「柘榴」

 そのはっきりと意思を滲ませた声を聞くのは久しぶりだと、視線を上げながら柘榴は唇の端を吊り上げた。

「私は生きたいの」

 恭しく腰を折り、持ち上げた手の甲に口付ける。

「どこまでも共に、My Lord」

 貴女のためなら何度でも傷を負おう。心を砕こう。貴女のためだけに。

「紫苑」
「この命尽きるまで」

 たとえ命が尽きようと。

「行くわよ」
「「御心のままに」」

 茨の道を進もうと。
ジブンガダレカモワカラナクナリソウナホドニ
 ソコハフカイフカイヤミノナカデ

「ヴィヴィアン・・?」

 ドコマデモドコマデモフカイヤミガツヅイテイテ

「柘榴・・紫苑」

 ワタシノホカニハダレモイナクテ

「サフィア・・」

 ツメタクテ

「誰かいないの」

 サムクテ

「ねぇ・・誰か!!」

 クルイソウナホドココチヨカッタ
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