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「それとも、オレが生き返らせてあげようか?」

 神なのだから、弄ぶ事に躊躇はしない
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「――くそっ」

 何故守れなかったのだと
 何故守らなかったのだと

「カノエっ・・」

 後悔しても遅い
 万死に値する

「あーあ、死んじゃったよお姫サマ」
「ッ――」
「どうする? もう守る人いないしあんたも死ぬ?」
「・・けるな」
「んー?」
「ふざけるなと言ったんだ」

 目の前に立つ相手を殺すために来たのだから
 目の前に立つ相手を殺すためにカノエは死んだのだから

「なに、戦る気?」

 俺は倒せと言われたのだから

「俺はお前を許さない」
「ふーん?」

 倒すしか道がないのだから

「でも、あんたじゃオレに勝てないよ」

 たとえ神にだって立ち向かう
「貴様が殺した」

 滅多に感情を荒げない男の静かな激昂に、誰もが頷く。

「理由などどうでもいい」

 むせ返るような殺気とクレイモアの切先を向けられ、床に座り込んだまま虚ろな瞳で虚空を見上げていたルヴィアは一度瞬いた。
 血に濡れた体から一滴、足元の血溜りに鮮血が滴る。

「シュバ・・ル、ツ?」
「死ね」
「「そうはさせない」」

 『Silver Rose』の剣が対峙した。
 シュバルツの前に立ちはだかり、柘榴と紫苑はそれぞれの剣を交差させる。

「邪魔をする気か」
「当然」
「俺達はルヴィアのシュバリエだ」

 死を望む主。

「愚かな」
「その言葉そのまま返す」
「お互い様」

 望まれた騎士。

「俺達はルヴィアを守る」
「この命にかえて」

 騎士を守る騎士。
 哀しみの黒。

「私、は――」

 血塗れた紅玉。
 アステリズムの現われたルビーレッドの義眼が、ゆっくりと細められた。

「ヴィヴィアンを生かすの」

 零された言葉にシュバルツは顔をしかめ口を開く。

「気がふれたか」
「・・そうかもしれない」

 ふらりとマリオネットのように立ち上がり、ルヴィアは足下の血溜りを見下ろした。
 真紅から、広がるにつれ赤へ。所々に散らばった肉塊。骨。転がされた頭部。

「いえ、狂ったのよ」

 腰を折り持ち上げた頭部を掲げ、ルヴィアはクスクスと声を上げて笑った。

「ルヴィア・・」
「どいて、柘榴。紫苑」

 四本目の『Silver Rose』を抜き放ち黒の騎士に向き直る。
 主の血を受け輝きを増したルビーレッドの義眼に、シュバルツは舌打ちした。

「これがヴィヴィアンの恐れた?目覚め?か」
「皮肉ね。封じようとしてきた彼女自身が目覚めさせた。そして」
「ッ――!」

 反射的に身を引いたシュバルツの喉をレイピアの切先がかすめ、鮮血が舞う。

「私はこの衝動を抑え込む術を知らない」
「?異端?の血か」
「違う。私は狂ってるの」

 体格で遥かに勝るシュバルツが力負けしていた。
 鞘ごと放り出された二本の短剣を拾い上げ、柘榴は剣を納め壁際に下がった紫苑に並ぶ。

「狂ってなんかないさ」

 優しい優しい紅玉の騎士。俺達の主。

「ああ」

 鋭い音と共にシュバルツのクレイモアは弾き飛び、その首にルヴィアが喰らいつく。

「おやすみなさい。とても忠実な黒の騎士」
「息をして」

 息が出来ない

「息をしなきゃ」

 ここには空気がない

「死んじゃうよ」

 なにもないから

「死なないで」

 なにもいらない
「何が、どれだけ信じられないの
 どうすれば、貴女は信じられるの」

 かけられた言葉に目を閉じた

「どうして、目を背けるの
 貴女は、全てを変える力を手に入れたのに」

 私はどこへでも行ける
 だからどこへも行けない

 私はなんだって出来る
 だから何も出来ない

「どうして――」
「貴女は、聞いてばっかりだ」

 静かな湖畔に涙が落ちる
「死にたくないなら命を手放せ」
「言ってることメチャクチャですからマヤさんっ!!」
 何の前触れもなく胸を埋め尽くすそれは、例えるならばどす黒い

「ぁー」

 どこまでもどこまでも黒くて、漆黒なんて綺麗なものじゃない

「イヴ?」
「・・・ん」

 それはすぐになりを潜め、私は日常に戻る

「ッ――」
「イヴ!?」

 でもいつか私を内側から喰い尽してしまうのだろう

「・・大丈夫大丈夫」
「大丈夫って・・」

 それが架せられたサダメなら、私は受け入れてしまうのだろう

「大丈夫だから」

 ?いい子?な自分に虫唾が走る
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