<?xml version="1.0" encoding="UTF-8" ?>
<rss version="2.0" xmlns:blogChannel="http://backend.userland.com/blogChannelModule" >
  <channel>
  <title>azure</title>
  <link>http://bloodshed.blog.shinobi.jp/</link>
  <atom10:link xmlns:atom10="http://www.w3.org/2005/Atom" rel="self" type="application/rss+xml" href="http://bloodshed.blog.shinobi.jp/RSS/" />
  <description>小噺専用</description>
  <lastBuildDate>Sun, 25 Aug 2013 05:43:15 GMT</lastBuildDate>
  <language>ja</language>
  <copyright>© Ninja Tools Inc.</copyright>
  <atom10:link xmlns:atom10="http://www.w3.org/2005/Atom" rel="hub" href="http://pubsubhubbub.appspot.com/" />

    <item>
    <title>銀のトゥルーデ：没なやつ</title>
    <description>
    <![CDATA[<br />
<br />
　結界都市を結界都市たらしめる結界の中へと、一歩足を踏み入れた途端。<br />
　最大限の悪意を持って首を掴まれでもしたかのような息苦しさを覚えた姫榊は堪らず、すぐさま取って返し結界を出た。<br />
<br />
「御主人様？」<br />
<br />
　水掘に囲まれた周壁をくぐり、広大な農場を横切って、ようやく市街地を囲む街壁(がいへき)に辿り着こうかという時。<br />
　どうかしたのか&hellip;と、尋ねるよう振り返って首を傾げるニドヘグに、姫榊は足元の地面へ一本の線を引いてみせた。<br />
　文字通りの「境界線」を。<br />
<br />
「思ってたより無理でした」<br />
「無理なんですか？」<br />
「絶対無理です。ハルカの胸倉掴んでがくがく揺さぶりながらどういうことなのか説明を求めたくなるレベルの無理です」<br />
「いったい何が無理なんです？」<br />
「私、これ以上進めません」<br />
<br />
　《門(ゲート)》と自動人形は似たような仕組みで動力を得ている。<br />
　《門》は魔法陣によって結界内の余剰魔力を。<br />
　自動人形は魔力炉によって周囲のエーテルを。<br />
<br />
　エーテルとは「世界という蓋のない水槽に満たされた水」だ。魔力とて元はエーテル。そういう意味で「制圧領域内に存在するエーテル」の全てに干渉できる自動人形は、あくまで器を溢れ主体を失くした「余剰魔力を収集」することしかできない《門》に対して有利&hellip;かと思いきや、現実はそう甘くない。実際にはその規模の違いで端から勝負にさえならないレベルで競り負け、大抵の自動人形は結界都市内でその行動を大きく制限される。<br />
　だがそれも、通常機動に支障のあるレベルではないはずだった。<br />
　《門》が展開する結界の中へ入っても戦闘機動への移行を制限される程度だと、統計データに基く予想以上の確信を持っていた姫榊は、「話が違う」と内心で己の創造主を罵った。<br />
<br />
「予定変更です」<br />
<br />
　無理をすれば入れないこともないが、わざわざそんなことをする必要はない。<br />
　徒人が圧倒的な割合を占める西側の街で、大した危険もありはしないだろう――。<br />
<br />
　冷静にそう判断した姫榊は、後戻ってくるニドヘグに対して初めての｜おつかい(・・・・)を言い渡した。<br />
<br />
「一人で街の中心部まで行って、魔術師ギルドで枷を売ってきてください」<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
　おそらく「九歳」という設定年齢相応の小さな体がいけなかったのだろう&hellip;と、姫榊は来た道を戻りながら自己分析。<br />
　通常機動時、自動人形のエーテルに対する制圧領域は「体内」に限定される。徒人が呼吸によって酸素を取り込むよう、自動人形はエーテルから魔力を取り出すのだ。体が小さければ当然、比例して肺も小さく、取り込めるエーテルの量も小さくなる。<br />
<br />
<br />
]]>
    </description>
    <category>蜂の巣物語</category>
    <link>http://bloodshed.blog.shinobi.jp/%E8%9C%82%E3%81%AE%E5%B7%A3%E7%89%A9%E8%AA%9E/%E9%8A%80%E3%81%AE%E3%83%88%E3%82%A5%E3%83%AB%E3%83%BC%E3%83%87%EF%BC%9A%E6%B2%A1%E3%81%AA%E3%82%84%E3%81%A4</link>
    <pubDate>Sun, 25 Aug 2013 05:43:15 GMT</pubDate>
    <guid isPermaLink="false">bloodshed.blog.shinobi.jp://entry/1249</guid>
  </item>
    <item>
    <title>このあまりに正しく間違った世界で：お試し詰め合わせ</title>
    <description>
    <![CDATA[<br />
<br />
　主よ。救いたまえ――。<br />
<br />
　祈りは届かず、願いは潰え、望みの絶えた世界。神の不在によって訪れた暗黒時代。混沌とした世の中を生きるためには「力」が必要だ。――いつか「ハンプティ・ダンプティ」と呼ばれることになる男。「つぶれ卵」ことトートは考えた。<br />
　欲しいものは奪うしかない。奪われたくなければ戦うしかない。<br />
　奪い、戦い、時に負け、けれどおおよそ勝ち続けた男。トートはいつしか「最強」と呼ばれるようになった。最強の男トート。死神トート。トートは誰より強くなった。最強だった。――けれど死んだ。わりと急に。だが何を思い残すようなこともなく、あっさりと。死んで、生き返った。いや正解には「生き返らせられた」。墓穴の底でぐっすり眠っていたところを叩き起こされたのだ。埋められてから十五年と少し。とっくに朽ちていておかしくないはずの体がどういうわけか生前そのままだった理由をトートは知らない。棺桶の蓋が開かれてから今に至るまで、そんな基本的なことを尋ねる機会さえ得られぬまま、トートは巻き込まれていた。<br />
<br />
「とりあえず、俺はこいつらを皆殺しにすればいいのか？」<br />
「よろしくお父さん！」<br />
<br />
　――そう、トートは実の娘らしき少女に掘り起こされた。まったくなんて罰当たりなやつだと思ったが、一目見て自分と母親だろう女の遺伝子を3：7くらい受け継いでいそうだったので言うのはやめた。二人とも無神論者だったからだ。<br />
<br />
「それで話が済むと思ってんのか、スー！」<br />
「拾ってやった恩を仇で返しやがって！！」<br />
<br />
　周囲の騒音にトートは顔を顰めた。自分の娘がぎゃーぎゃー言うならまだ許せるが、生前からトートは喧騒より静寂を好む性質だ。煩い輩は力づくで黙らせてきた。周囲を取り囲んでいる連中など物の数にもはいらない。どうやら飛び道具を使ってくる様子もないので、余裕も余裕。<br />
<br />
「そこ、座って、動くな」<br />
「はいパパ！」<br />
<br />
　掘り返された墓穴の脇。暴かれた棺の影に娘――スー――が座り込むのを見届け、トートは十五年と少しぶりに拳を振るった。<br />
<br />
「『パパ』って柄かよ、俺が」<br />
<br />
　圧勝だった。<br />
<br />
<br />
<br />
---<br />
<br />
<br />
<br />
別テイク<br />
<br />
「はじめまして、お父さん。娘です」<br />
<br />
　少女は開口一番そう言って、懐から取り出した拳銃で部屋の入口に立った男をずどん。<br />
<br />
「さっそくですが逃げましょう。もうここに用はありません」<br />
<br />
　いけしゃあしゃあとのたまう顔は、昔馴染みとよく似ていた。<br />
<br />
　そうして娘と名乗った少女がトートと逃げ出したのは、こじんまりとした病院。だが外観と内情が噛み合っていないことは、生き返ったばかりのトートにさえわかった。<br />
　娘は病院のエントランスへ突っ込むよう停めてあった車に乗り込むと、穴だらけのフレームや死屍累々の周囲に頓着することなく、エンジンを始動させた。ブレーキをいっぱいに踏み込んだままアクセルを吹かし、その場で半回転すると颯爽と病院を飛び出していく。<br />
　中身もあいつに似やがったな&hellip;と、トートは見覚えのない町並みへと目を凝らす。<br />
<br />
「お前、いくつだ？」<br />
「２３」<br />
「年上じゃねぇか」<br />
「&hellip;そういえば、父さん二十歳で死んだんですっけ。年功序列を気にするタイプなんですか？」<br />
「気にしねぇ。が、娘より年下ってのはさすがに思うところがあるな」<br />
「じゃあ娘と思わなくていいです」<br />
「そういうこと言ってんじゃねぇよ、馬鹿が」<br />
<br />
<br />
--<br />
<br />
<br />
「――よくもやってくれましたねこの腐れ外道。人の父親の体を実験に使うだなんて。有罪です。極刑です。超法規的措置も許可されます。執行官《アイギス》スーがここに宣言します。あなたの罪は今ここで、私によって裁かれます」<br />
<br />
<br />
---<br />
<br />
<br />
「不死身の兵士を作ろうとしていたのです。お父さんは完成形です。記憶を弄られる前に助け出せてよかったのです。お母さんに怒られずにすみます」<br />
「&hellip;あいつ生きてんのか」<br />
「とっくの昔に死にました」<br />
<br />
<br />
]]>
    </description>
    <category>小噺</category>
    <link>http://bloodshed.blog.shinobi.jp/%E5%B0%8F%E5%99%BA/%E3%81%93%E3%81%AE%E3%81%82%E3%81%BE%E3%82%8A%E3%81%AB%E6%AD%A3%E3%81%97%E3%81%8F%E9%96%93%E9%81%95%E3%81%A3%E3%81%9F%E4%B8%96%E7%95%8C%E3%81%A7%EF%BC%9A%E3%81%8A%E8%A9%A6%E3%81%97%E8%A9%B0%E3%82%81%E5%90%88%E3%82%8F%E3%81%9B</link>
    <pubDate>Sat, 03 Aug 2013 17:20:14 GMT</pubDate>
    <guid isPermaLink="false">bloodshed.blog.shinobi.jp://entry/1248</guid>
  </item>
    <item>
    <title>月虹：シカトされるヴィオレッタ</title>
    <description>
    <![CDATA[<br />
<br />
　基本、体力勝負な外回りの仕事を終えたヴェルメリオとレギがスィアチの館――トリルハイム――に戻ると、正面の広場でやたら露出の高い女がくるり、くるり、と踊っていた。<br />
　下着姿の方がよっぽど慎み深く見えるのではないかというほど。やたらと透ける薄布を幾枚か重ねて巻きつけ、隠すべきところをぎりぎりで隠せているかいないか微妙なラインの衣装で、蝶が鳥の類が舞うようひらり、ひらり、動く度にりん、りん&hellip;と涼やかな音がする。それは手首や足首につけた鈴から発せられる音だろう&hellip;と、ある程度観察した所で、館の正面入口へと辿り着いたヴェルメリオはレギのため、重い扉を開けてやる。<br />
　凄腕の幻術使い（ただし色狂い）がわざわざ人目につく場所で踊る理由は、生憎と一つしか思いつかなかった。<br />
　目を奪われたら最後、命どころか貞操が危うい。よって関わらず、さっさと立ち去るのが吉&hellip;と、ヴェルメリオは――ぴしゃり――扉を閉めきった。<br />
<br />
<br />
]]>
    </description>
    <category>魔女の棲む森</category>
    <link>http://bloodshed.blog.shinobi.jp/%E9%AD%94%E5%A5%B3%E3%81%AE%E6%A3%B2%E3%82%80%E6%A3%AE/%E6%9C%88%E8%99%B9%EF%BC%9A%E3%82%B7%E3%82%AB%E3%83%88%E3%81%95%E3%82%8C%E3%82%8B%E3%83%B4%E3%82%A3%E3%82%AA%E3%83%AC%E3%83%83%E3%82%BF</link>
    <pubDate>Sat, 27 Jul 2013 17:28:55 GMT</pubDate>
    <guid isPermaLink="false">bloodshed.blog.shinobi.jp://entry/1247</guid>
  </item>
    <item>
    <title>月虹：ヴェルメリオの相手をレギにするか相手なしにするか迷う</title>
    <description>
    <![CDATA[<br />
<br />
　ヴェルメリオとレギが共に所属するパーティーは、長らくスリュムヘイムの盟主スィアチに雇われ、大陸最大の魔境で《迷宮(ダンジョン)》の保守管理を任されている。<br />
　大陸の四分の一を占めるヨトゥンヘイム。更にその三分の一ほどを占める魔境――スリュムヘイム――に点在し、増減を繰り返す数多の《迷宮》を一つ一つ見て回り、個々の状況を報告書にまとめ上司へ提出することがまず基本的な仕事。その他にも、「初心者向け」とされている《迷宮》に魔物が寄りすぎているようなら雑魚狩りを。どこかの《迷宮》が人知れず攻略されていたりすれば、新たな《心臓》を設置しに行ったりもする。<br />
　有能な上司が能力主義なため「できることはなんでも」やらされがちな戦闘職の二人だが、生憎と「スリュムヘイム内で｜生まれた(・・・・)魔族の保護(・・)」は業務に含まれていなかった。パーティーを組む仲間の知的好奇心を満たすため、狩りに駆り出されることはままあるが。実際にはそれ専門に雇われている者が他にいた。<br />
<br />
　だがまぁ、別に断る必要もないだろうと、ヴェルメリオは拾ってきた魔族を――レギに促されるがまま――直接、レギとルシアに与えられた部屋へと放り込む。<br />
　魔境では何事も自己責任だ。落ちているものを拾おうと、誰かのものを奪おうと、誰からも咎められない代わり誰からも守ってもらえない。弱肉強食。<br />
<br />
「ありがと」<br />
<br />
　だからレギの「拾い物」が咎められることもないだろう――。<br />
　端から必要としてもいなかった助力――それを大抵の人は「お節介」と言う――へ素直に感謝してみせるレギの頭をなんとなく、くしゃりと撫でてやりながら。ヴェルメリオは「いつものことだ」と肩を竦めた。<br />
<br />
「あぁ。いいよ、これくらい。――お前に運ばせるのもあれだしな」<br />
<br />
　《マナ》が生み出す魔力にそれなりの余裕があれば、レギのよう細腕の女だろうとそこそこの膂力を発揮することができる。だとしても、女に人一人運ばせて自分が手ぶら、というのはなんとなく嫌&hellip;というは、完全にヴェルメリオの都合だ。ちっぽけなフェミニズム。<br />
　どうせ何かしらと戦闘になった時、戦うのはヴェルメリオでもレギでもなくレギに張り付いたルシアなのだから――と、そんな風に考えなくもなかったことだし。全く、これっぽっちも、レギがヴェルメリオに対して感謝する必要はなかった。<br />
<br />
「うん」<br />
「ところであれ、本気でルシアのやつどうするつもりなんだ？」<br />
「知らない」<br />
「&hellip;中身、空だろ？」<br />
「多分」<br />
「ヴェルナーのとこ行って、奴隷用の記録魔石もらってきてやろうか？」<br />
「&hellip;&hellip;」<br />
<br />
「ルシア。いらない」<br />
「だから本気でどうするつもりだよ&hellip;」<br />
「洗う」<br />
「&hellip;洗って、そのあとは？」<br />
「&hellip;&hellip;ルシア、食べる」<br />
「あいつなんでも丸呑みするじゃん」<br />
「性的に」<br />
「まじか&hellip;」<br />
<br />
「あいつそういう趣味なわけ」<br />
「レギ。知らない」<br />
「ヴィオレッタじゃあるまいし&hellip;。まぁいいや。そういうことならお前、ちょっとこい」<br />
「どこ」<br />
「隣だよ。俺の部屋。それくらいなら別にいいだろ」<br />
「&hellip;&hellip;ルシア、いい。行く」<br />
<br />
　ルシアが「いい」と行ったから、行く。<br />
<br />
「とりあえずシャワー浴びて、飯な」<br />
「食堂無理。怒られる」<br />
「それくらいなんか取ってきてやるよ。何食べたい？」<br />
「ヴェル？」<br />
「&hellip;まじか」]]>
    </description>
    <category>魔女の棲む森</category>
    <link>http://bloodshed.blog.shinobi.jp/%E9%AD%94%E5%A5%B3%E3%81%AE%E6%A3%B2%E3%82%80%E6%A3%AE/%E6%9C%88%E8%99%B9%EF%BC%9A%E3%83%B4%E3%82%A7%E3%83%AB%E3%83%A1%E3%83%AA%E3%82%AA%E3%81%AE%E7%9B%B8%E6%89%8B%E3%82%92%E3%83%AC%E3%82%AE%E3%81%AB%E3%81%99%E3%82%8B%E3%81%8B%E7%9B%B8%E6%89%8B%E3%81%AA%E3%81%97%E3%81%AB%E3%81%99%E3%82%8B%E3%81%8B%E8%BF%B7%E3%81%86</link>
    <pubDate>Sat, 27 Jul 2013 15:02:13 GMT</pubDate>
    <guid isPermaLink="false">bloodshed.blog.shinobi.jp://entry/1246</guid>
  </item>
    <item>
    <title>新しいやつ冒頭</title>
    <description>
    <![CDATA[<br />
　<br />
　昔、子供を養っていたことがある。<br />
　小さな男の子。<br />
　にこりとも笑わなくて、可愛気の欠片もないけど利口な子。<br />
　生きることに強かで、憎たらしいほど賢くて、脆弱な人の子。<br />
　食べなければ飢える。<br />
　眠らなければ疲れる。<br />
　寒ければ凍えて、暑ければバテる。<br />
　そんな、どこにでもいる当たり前の子供だ。<br />
<br />
　あれはいったい、いつのことだったか。<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
「エカルラート」<br />
<br />
　あの頃はもっと違う名前で呼ばれていた。<br />
　そんな回顧。<br />
　なんでもないような顔をして、声のした方を振り返る。<br />
<br />
「どっちがいい？」<br />
<br />
　声をかけてきたのは、見慣れた連れ。<br />
　まっすぐに長く伸ばした黒髪を結うこともせず、すとん、と腰まで落とした女性。<br />
　凛とした立ち姿がいたく様になっていて、私はついつい笑みを浮かべてしまいながら、差し出された右手の先へと目を向ける。<br />
<br />
　どっちがいい？<br />
　そう言って差し出されたのは、白くて丸い二枚のプレート。<br />
　プレートにはそれぞれ黒字で「96」「97」と数字が刻印されている。<br />
　前者はいかにも、それを差し出してくる彼女のために誂えられたような数だ。<br />
<br />
「こっち」<br />
<br />
　そういう意味で、私に似合いの番号とは「46」だろう。<br />
　迷うことなく後者をとった。<br />
　彼女が「黒」で、私が「白」。<br />
　そういうコンビだ。]]>
    </description>
    <category>黒白揚羽</category>
    <link>http://bloodshed.blog.shinobi.jp/%E9%BB%92%E7%99%BD%E6%8F%9A%E7%BE%BD/%E6%96%B0%E3%81%97%E3%81%84%E3%82%84%E3%81%A4%E5%86%92%E9%A0%AD</link>
    <pubDate>Sat, 13 Jul 2013 22:07:33 GMT</pubDate>
    <guid isPermaLink="false">bloodshed.blog.shinobi.jp://entry/1245</guid>
  </item>
    <item>
    <title>世界は今日も平和、なのです</title>
    <description>
    <![CDATA[<br />
<br />
「あ、流れ星」<br />
<br />
　きれいだなー。<br />
<br />
　右から左。<br />
　長々と尾を引いて伸びる一筋の光を追い、リリスは視線を巡らせる。<br />
　地面からほぼ垂直方向に上昇している《グレンデル》の機内から、流れる星が燃え尽きるまでの一部始終は驚くほど鮮明に見て取れた。<br />
<br />
〈さっきこっちで墜とした船の一部かもね〉<br />
（どうしてそういうロマンのないこと言うかなー）<br />
〈かも、というかそのものですね。墜落時の軌道予測と一致します〉<br />
<br />
「――そういうことはわかってて黙っててよ」<br />
<br />
〈ロマンチックなこと言って欲しい？〉<br />
「&hellip;欲しくない」<br />
<br />
〈今から君の――君だけの――ために、数えきれないほどの星を降らせてあげる〉<br />
<br />
（ロマンチックというより物騒だー&hellip;）<br />
<br />
〈いい加減に雑魚が鬱陶しいからね。――アベル、主砲に《重力遊戯(グラヴィティギア)》を接続しろ。重力波で薙ぎ払え〉<br />
<br />
「こっちを巻き込まないでよ？」<br />
〈《グレンデル》の機動なら狙ったって避けられるよ〉<br />
（えぇー&hellip;）<br />
<br />
それはつまり努めて避けてはくれないということだろうか。<br />
さすがに母艦の主砲は喰らいたくない。<br />
<br />
「アベル、重力波の影響予測」<br />
〈――《グレンデル》の帰投予定に変更はありません〉<br />
（そういうこと言ってるんじゃなーい）<br />
<br />
<br />
]]>
    </description>
    <category>蜂の巣物語</category>
    <link>http://bloodshed.blog.shinobi.jp/%E8%9C%82%E3%81%AE%E5%B7%A3%E7%89%A9%E8%AA%9E/%E4%B8%96%E7%95%8C%E3%81%AF%E4%BB%8A%E6%97%A5%E3%82%82%E5%B9%B3%E5%92%8C%E3%80%81%E3%81%AA%E3%81%AE%E3%81%A7%E3%81%99</link>
    <pubDate>Fri, 12 Jul 2013 18:49:25 GMT</pubDate>
    <guid isPermaLink="false">bloodshed.blog.shinobi.jp://entry/1244</guid>
  </item>
    <item>
    <title>忌み銀</title>
    <description>
    <![CDATA[<br />
<br />
　空の、とてもとても高いところに浮いている、竜の都のお姫さま。魔除けの銀をその身に纏う、真赤な宝石の目を持つお姫さま。<br />
　ある日、はるか地上の国の騎士さまが、竜の都へやってきて、竜のお姫さまが持つ、たった一つの宝でお国を救ってくださるように、どうかどうかと頼まれました。<br />
　心優しい姫さまは、お国のためなら仕方がないと、大事な宝を手放され、道端の石ころを一つ拾ってくると、それを大事な宝の代わりにしようと考えました。<br />
　そうしてはるばる竜の国までやってきた、騎士さまの、地上のお国は救われました。<br />
<br />
　めでたし、めでたし。<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
「――と、いうわけで。お前、国に戻されることになったから。今日中に身仕度済ませるように」<br />
「はぁ…」<br />
<br />
　いったい何が「と、いうわけ」なのか。わからないなりに、扉を開け放つなりおそらくとんでもないことを言い放った女性――エレイン・ヴィルヘルミラ――の勝手気ままな言動にも慣れっこなカッシュは、「あーよっこらせ」と居心地の良い出窓から腰を上げた。<br />
<br />
「サーシャも連れていいっていいんだよね？」<br />
「騎竜の一匹もいないと格好がつかないだろう」<br />
「…ま、確かに」<br />
<br />
　カッシュにとって大切で、必要なものというのはそうない。姉に貰った本と、姉が仕立ててくれた服と、姉から贈られたものの全て。<br />
　それと、サーシャ。<br />
<br />
（サーシャは騎竜というより恋人なんだけどなぁー）<br />
<br />
　まぁ、いいか。<br />
　読みかけの本をそのまま書架へと戻し、カッシュは何やら立ち読みを始めたエレインに一声かけ、他ならぬ彼女の私的な書庫を立ち去った。<br />
<br />
　長いこと暮らしている城内をあちこちへの挨拶がてら歩いていると、どうやら、生国で双子の弟が死に、世継ぎの王子がいなくなったため、やむなく竜都へ預けられていた「忌み子」のカッシュが呼び戻されることになったらしい…と、エレインが説明を省いた大凡の事情がわかってくる。<br />
　エレインが国へと返すカッシュの「代わり」にと使者の一団を率いる竜騎士団の長を望み、団長もそれを二つ返事で承諾したという――ある意味で今世紀最大の――スキャンダルに沸く城内。渦中のカッシュが情報を得るのは、比較的容易かった。どうして本人をすっ飛ばしてそんなことに…と、思わなくもないが。竜都における公式の立場が「竜姫のペット」であり、次代の竜帝の所有物でしかないカッシュにどうこう言える筋合いもない。<br />
　そもそも生国から正式に要請があれば返還に応じるというのが現竜帝――ひいては竜都――の方針だ。それでも頑として拒否すればエレインが何としてもここへ留まることができるよう動いてくれることをわかっているだけに、カッシュは聞き分けよく生国へ下るしかない。何より、元はと言えばエレインに拾われた命だった。エレインのいいように。エレインが本当に「欲しいもの」とトレードされたというのなら、まだ納得もできる。<br />
　聞くところによると、使者の一団を率いて竜都に入った竜騎士団長というのは大変な美丈夫で、エレインと同じ銀の髪を持ち、真夏の空のよう青々とした目の――竜さえ霞ませるほど凄絶な美貌を持つエレインと並べても見劣りしないほど、並の美女では隣に立つことさえ躊躇われるほどの――男らしい。<br />
　正直この世にエレイン以上の美貌の主はいないと確信しているカッシュも、些か気になる触れ込みだった。銀髪というのも、カッシュの生国では珍しい。主流は――カッシュもそうだが――金髪紫眼だ。銀髪が多いのは隣の大国。戦争中というわけではないが、けして関係良好でもない他国の血を色濃くその身に宿した男が国の要とも言える竜騎士団の長。これいかに。<br />
<br />
　はてさて首を傾げながらも自室へ戻ったカッシュは、部屋に入ってまず、人一人分こんもりと盛り上がった寝台へと近付き、上掛けをひっぺがした。<br />
<br />
「ふわっ！？」<br />
<br />
　いかにも「驚きました」といった具合に飛び起きたのは、少女時代のエレインによく似た美貌の少女。ただしあくまで「よく似ている」というだけで、全く同じ造形でも表情の出し方一つでここまであからさまに違ってくるものか…と、使い魔として彼女を造った本人(エレイン)でさえ首を傾げてしまうほど、その少女はエレインからかけ離れて幼く、あどけなかった。<br />
　一目見れば誰にもエレインでないとわかる。<br />
<br />
「なんだ、カッシュかぁー」<br />
「もうとっくに昼過ぎてるよ、お寝坊さん」<br />
<br />
　見かけどおりに幼い仕草で目元をこすり、欠伸を零す少女――サーシャ――が寝台から下りるのに手を貸してやり、カッシュは自分も人伝にしか知らない事情を簡単に説明した。<br />
<br />
「えー、じゃあもうカッシュとさよならだね」<br />
「えぇー、なんで迷いなく残る体(てい)なの。サーシャも来るんだよ」<br />
「サーシャはエレインと一緒！」<br />
「姉さんは俺と一緒。サーシャは一人で竜都に残るの？」<br />
「エレインがカッシュと一緒ならサーシャもカッシュと一緒！」<br />
<br />
　分別もろくにつかない子供を言い包めて拐かす悪い大人になった気分で、カッシュは「よくできました」とサーシャにご褒美のキスをした。<br />
　ノリノリである。<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
（第七書庫）]]>
    </description>
    <category>小噺</category>
    <link>http://bloodshed.blog.shinobi.jp/%E5%B0%8F%E5%99%BA/%E5%BF%8C%E3%81%BF%E9%8A%80</link>
    <pubDate>Sun, 02 Jun 2013 06:25:10 GMT</pubDate>
    <guid isPermaLink="false">bloodshed.blog.shinobi.jp://entry/1243</guid>
  </item>
    <item>
    <title>どう考えてもRASISと展開被った紅銀狐の呪われ子の没</title>
    <description>
    <![CDATA[<br />
<br />
　暗い夜道。<br />
　女の一人歩き。<br />
<br />
　そんな場面(シーン)から始まる話はありがちだ。<br />
　この物語も例に漏れず、独り身の女性が歩き慣れた帰路の途中で抗い難い「運命」との邂逅を果たすようなテンプレ通りに動き出す。<br />
<br />
　女の名は栞菜(かんな)。足の付根にまで届くほど長く伸ばした癖のない黒髪を結うこともせず背中へ流し、颯爽と歩くさまがいかにも「凛」として人目を惹く、生き物が呼吸するほどには自然と美しく在るような女性だ。<br />
　黒水晶の瞳を囲う目の輪郭は切れ長で、射抜くような視線が意思の強さを匂わせる。<br />
　化粧っ気もないのに抜けるよう白い肌と紅を刷いたが如く赤く色付いた唇に、同性でさえ嫉妬よりも強く羨望の念を抱く。まるで絵に描いた令嬢がカンバスの中から飛び出してきたか、腕利きの人形師が丹誠込めて仕上げた極上の人形が魂を得て動き出したかのよう、完成された美しさを持つ女性。<br />
　そんな栞菜が出会す「運命」もまた、常人とは相容れない――いわば、別次元の――美しさを生まれ持つ男だ。<br />
　金髪碧眼。<br />
　栞菜が極東に暮らす倭人(わじん)の典型なら、その男は西大陸に暮らす徒人(ただびと)の典型だった。<br />
　二人が出会したのは、倭(やまと)。<br />
　この場では男の方が「異邦人」ということになる。<br />
　道端で蹲る見ず知らずの男へ栞菜が声をかけるには、それくらいの理由が必要だった。<br />
<br />
「あなた、死ぬわよ」<br />
<br />
　まるで天気の話でもするよう、軽く、栞菜は血塗れの男へ告げる。<br />
　さもありなん。倭は有史以来、その閉鎖性にかけては東大陸並の島国だ。人工島との交流で外界の情報は湯水の如く入ってくるが、生身の人は輸入品目に含まれない。いるはずのないもの、あるはずのないもの、いてはならないもの、あってはならないものにとって倭の環境は過酷としか言いようがない。<br />
　道端に血塗れの男が蹲っていても「異邦人だから」と、ただそれだけの理由で納得できてしまうほどには物騒な場所。それが栞菜の知る倭という国で、その認識は正しい。<br />
　かといって、倭に暮らす誰もが出会い頭に問答無用で殺そうとするほど異邦人を生理的に受け付けないのかといえば、そうでもない。少なくとも栞菜は違うし、栞菜の知り合いの中にも、そこまで極端な鎖国民は片手で数えられるほどしかいなかった。<br />
　けれどそもそも、入るな、と言われてる場所に入る方が悪い。<br />
　何事も「自己責任」が基本の国で育った栞菜はそんな風に考えながら、傍目から見てどう控えめに表現したところで「死にかけている」男の前にしゃがみ込む。うっすら開いた瞼の向こうでゆらゆらと揺れる硝子玉のように透き通った目の動きを少しの間追いかけてから、ようやく、己の過ちに気付いた。<br />
　月明かりで落ちる濃色の影が波立って、栞菜にそれを教えた。<br />
<br />
「あら」<br />
<br />
　その男は異邦人ではなかった。<br />
<br />
「あなた、妖なのね」<br />
<br />
　その男は徒人でさえなかった。<br />
　倭ではさして珍しくもない妖(あやかし)の一匹。それが男の正体で、ある意味異邦人以上に道端で死にかけていたとしてもおかしくない存在だ。倭人離れした容姿にも説明がつく。そもそも「人」でさえないのだから、目に見える器(ようし)だけでその本質を測ろうというのも馬鹿げた話だった。<br />
　人外(それら)は本来、傷付けて血を流す肉体(からだ)なんてもの、端から持ちえない存在(もの)だ。<br />
　そうとわかれば。<br />
　栞菜はいかにも機嫌良くにんまりと笑い、足下の影を見た。<br />
<br />
「真神(まがみ)」<br />
<br />
　次の瞬間、男の姿は消えている。<br />
<br />
　もちろん、栞菜が男を己の影に棲まう妖狼に喰らわせた…などという非情な結末の話ではない。<br />
　目に見える《表》の世界から姿を消した男は、栞菜が使役する《式》――大口真神(おおぐちまがみ)――の《領域》へと収容されていた。<br />
　そうすれば、男を単純に「荷物」として考えた場合の重さや嵩は考える必要がない。栞菜はそれまでと変わらず手ぶらのまま、仕留め損ねた獲物を追って徘徊している｜かもしれない(・・・・・・)「何か」のことを気にする必要もなく、何食わぬ顔で歩みを再開することができた。<br />
　それから三十分ほど歩いた先に、栞菜の仮住まいはある。<br />
　単身者向けの小さなアパート。三階建ての最上階。階建を上がりきった先に伸びる廊下の突き当たり。五つ並んだ一番奥の扉が、栞菜が借りている部屋のものだった。<br />
　何の変哲もない金属の鍵で錠を開け、何事も無く帰宅した栞菜は真先に浴室へと向かい、真神に男を出すよう言いつけた。<br />
　《式》である真神が主人(かんな)の命令に逆らうようなことはない。<br />
　瞬き一つする間に姿を現した男は相も変わらず満身創痍。死にかけていて、その状態は栞菜にとって酷く都合が良かった。<br />
　ぐったりと目を閉じた男の額へ手を当てて、栞菜は力ある言葉を掠れるほどほんの少しの声で囁く。それは大抵の妖にとって忌諱すべき呪縛で、要は「命を助けてやるから下僕になれ」というようなことを栞菜は言い、弱り切った男の心臓を言葉の鎖で雁字搦めに縛り上げた。<br />
　妖を弱らせて下すというのは、《式》を手に入れるにあたって真当な手段。乱暴な言い方をすれば、死にかけの妖を運良く見つけ《式》へと下す術を知ってもいた栞菜の正当な「権利」だ。<br />
　男の弱り方から見て、失敗などありえない。<br />
　そう確信していた栞菜は正しく、契約は不備なく結ばれた。<br />
　それまでは真神だけのためにあった力の流れが目の前の妖にも向かい始めたのを感じ、栞菜は浴室を後にする。<br />
　充分に力(えさ)さえ与えておけば、放っておいても勝手に最適化(かいふく)する。妖とはそういうものだと、真神との付き合いもそれなりに長い栞菜は知っていた。<br />
<br />
<br />
]]>
    </description>
    <category>蜂の巣物語</category>
    <link>http://bloodshed.blog.shinobi.jp/%E8%9C%82%E3%81%AE%E5%B7%A3%E7%89%A9%E8%AA%9E/%E3%81%A9%E3%81%86%E8%80%83%E3%81%88%E3%81%A6%E3%82%82rasis%E3%81%A8%E5%B1%95%E9%96%8B%E8%A2%AB%E3%81%A3%E3%81%9F%E7%B4%85%E9%8A%80%E7%8B%90%E3%81%AE%E5%91%AA%E3%82%8F%E3%82%8C%E5%AD%90%E3%81%AE%E6%B2%A1</link>
    <pubDate>Fri, 04 Jan 2013 00:40:12 GMT</pubDate>
    <guid isPermaLink="false">bloodshed.blog.shinobi.jp://entry/1242</guid>
  </item>
    <item>
    <title>銀のトゥルーデ：古めの設定で書いたふるいの</title>
    <description>
    <![CDATA[<br />
<br />
　目覚めると、そこは見慣れた部屋の中。抱きしめて眠ったはずの温もりはなく、闇色の硝子に映る私一人きり。<br />
　普段と何一つ変わることのない朝だった。<br />
<br />
「…うそつき」<br />
<br />
　主(オーナー)の目覚めを感知して、透明な硝子のあちらこちらに《窓》が開く。時計と今日のスケジュールと、あらかじめ指定してあったニュース番組。<br />
　時間はいつも起きるより少しだけ早かった。<br />
<br />
「インフォメーション」<br />
〈コンタクト〉<br />
<br />
　独り言よりは少し大きいくらいの声で囁くと、指向性のスピーカーからすぐに返事が会った。それもいつものとおり。<br />
<br />
「今日の天気は？」<br />
〈人工島全域にわたって降水予定はありません〉<br />
「…次の雨は？」<br />
〈二日後の深夜に環境調整のためナノマシン散布を予定しています〉<br />
「クローズ」<br />
〈切断します〉<br />
<br />
<br />
<br />
---<br />
<br />
<br />
<br />
　身支度をしようと、鏡の前に立って初めて事の重大さを知った。鏡に映る自分の姿を一目見て。<br />
　黒髪黒目。昨日まではこれといって目立つこともない彩色だったのに。今日の私の瞳は鮮やかなアイスブルーに染められていた。<br />
<br />
「アル…」<br />
<br />
　夢の竜と同じ色。<br />
　好きに呼べ、と言われてその通りにした。たった二つの音で喉を震わせた途端、胸の奥に生まれる熱がある。見過ごすことができない程の、強い熱。それは夢の中で美しい竜に名前を付けた時と、まるで同じ。だから期待してしまっていた。<br />
<br />
「姫榊」<br />
<br />
　胸を押さえ蹲る私を、いるはずのない「誰か」の腕が引き寄せる。真後ろへ。<br />
　尻餅をつくと思った体は、あまりに易々と抱きあげられた。<br />
<br />
「姫榊」<br />
<br />
　抱き上げたのは見たこともない男だった。青みがかった銀髪の、美しい。<br />
<br />
「ようやくお前の全てに会えた」<br />
<br />
　青く凍りついたような色の目をした男。<br />
　交わる視線は鏡越し。絡めとるよう抱きしめられながら。見間違え様のないほど熱の込もった目を向けられ、顔が火照った。<br />
<br />
「アル、なの…？」<br />
「あぁ」<br />
<br />
　これが夢なら、もう覚めなくていい。<br />
<br />
<br />
<br />
---<br />
<br />
<br />
<br />
　代わり映えしない「日常」は壊れた。<br />
　さて次は？<br />
<br />
「ここはエーテルが濃いな…」<br />
<br />
　感慨深く言ったアルに、それはそうだろうと思う。ここは人工島だ。世界を二つに分ける魔術的境界線の始まりと終わりの場所。世界で唯一この場所だけに、エーテルは正しく存在する。――そう、私たちは教わった。<br />
<br />
「アルはどこからきたの…？」<br />
<br />
<br />
<br />
---<br />
<br />
<br />
<br />
　さて次は？<br />
<br />
「あっ…」<br />
<br />
　アルに触られていると、胸の奥に生まれた熱がじくじくと疼いた。痛みとは違う。だからといって優しくもない感覚に離してほしくて頭を振った。背中から抱きしめるアルとの間に少しでも冷静になれる距離が欲しくて。身を捩る。<br />
<br />
「はなして！」<br />
<br />
　アルの腕はあっけないほど簡単に外れた。<br />
<br />
「私に何をしたの！？」<br />
<br />
　もどかしい疼きが治まると、今度は妙な焦燥が私を苛んだ。どうにか紛らわそうと頭を振ってもどうにもならない。喉の奥から叫びだしたいくらいの衝動がせり上がってきて、苦しさはどちらにしろ変わらなかった。<br />
　私を見つめるアイスブルーの目だけが変わらない。<br />
<br />
「お前は俺に名を付けた。その声でもって存在を定め、縛り、そして――」<br />
<br />
　どちらがいいか、なんて決められなかった。どちらも最低。「マシ」な方さえ選べないくらい。触れられていても、触れられていなくても同じくらい苦しかった。<br />
<br />
「お前は俺を手に入れた」<br />
<br />
　捕まったのは私だと、腕の中へ連れ戻されて悟る。たとえ夢の中であろうと人外への「名付け」なんて行うべきではなかった。それが時としてどれほどの意味を持つか、人工島で生まれ育った私は知っているはずだったのに。<br />
　「それでもいい」と、思うだなんて。<br />
<br />
「お前はもう一人でないよ」<br />
<br />
　艶やかに笑うアルの前に、代わり映えしない「日常」は脆くも崩れた。<br />
　あとはきっと、どこまでも落ちていくばかり。<br />
<br />
<br />
<br />
---<br />
<br />
<br />
<br />
　胸の疼きはしばらくすると落ち着いた。それまで私のことを抱きしめたまま、ずっと傍にいてくれたアルは、熱の在処を探るよう肌蹴させたシャツの胸元をなぞる。<br />
<br />
「くすぐったい…」<br />
<br />
　その頃にはもう、すっかりアルとの接触には慣れきってしまっていた。<br />
<br />
「お前が魔術師であれば、もっと早く馴染んだのだろうがな」<br />
「馴染む…？」<br />
「俺のマナが、お前の体に」<br />
「マナ…」<br />
<br />
　《マナ》。それは、人間以外の魔力を持った生き物にとっては心臓と同じ意味を持つものだ。竜族にしろ妖にしろ、彼らはそれを人へ渡すことによって命を繋ぐ。契約を、結び。<br />
　人へと己に近い寿命を与える。<br />
<br />
「正気なの」<br />
<br />
　それは取り返しの付かない契約だ。《マナ》を持った人が死ねばその持ち主さえも道連れにされる。そんなことをしなければいつまでだって生きられるのに。<br />
<br />
「マナを渡すということの意味は知っているんだな」<br />
「あなたの命なんて背負えない…！」<br />
「もう手遅れだ」<br />
<br />
　なんて非常識で身勝手な竜だ。信じられないくらい。<br />
　双方の合意なく契約が交わされるなんて聞いたこともない。<br />
<br />
「お前が現れなければ、俺はあのまま緩やかに死んでいただろう…だが、お前と出会ってもう少し生きたくなってしまった。だからお前が責任をとれ」<br />
<br />
　なんて傲慢な男だ。<br />
<br />
「だいたいあなた、どこから来たの」<br />
<br />
<br />
<br />
---<br />
<br />
<br />
<br />
　床に直接置いた枕とくしゃくしゃになったタオルケットが唯一の生活感と言っていいくらいの、何もない部屋だった。寝に帰っているだけの、だけどこの人工島で生まれ育ったのだから仕方のないことだと思っている。ここではIDさえあれば、ほとんどなんだってできてしまうのだから。<br />
<br />
「同じだな」<br />
<br />
　アルの言わんとすることは、なんとなく理解できた。「同じ」というか、「似ている」のだ。この部屋は。アルと私が出会ったあの場所に。<br />
<br />
「妙な気分だ」<br />
<br />
　どうしてアルは、あんな場所に蹲っていたのだろう。<br />
<br />
「…気になるか？」<br />
<br />
　ちょっとした身長差。隣に並んで立たれると、私はアルを見上げなければならなかった。<br />
<br />
「俺は閉じ込められて、閉じこもっていた。役目を終えた竜の末路だ」<br />
<br />
<br />
<br />
---<br />
<br />
<br />
<br />
「アル」<br />
<br />
　知りもしない名前は、初めからわかりきっていたようするりと口をついて出た。<br />
<br />
「（いいだろう）」<br />
<br />
　竜は頷く。細められた目の奥に揺れたものの正体を知りたくて一歩近付くと、それからの距離は竜の方から詰めてきた。頤を床へこすりつけるよう頭を下げて。何もかもを明け渡すよう目を閉じてしまう。<br />
<br />
「アル」<br />
<br />
　けれど呼べばまた目を開けて。<br />
<br />
「（お前の名は？）」<br />
「姫榊」<br />
「（姫榊）」<br />
<br />
　話す言葉に音はない。<br />
<br />
<br />
「（目覚めろ）」<br />
<br />
<br />
　そのたった一言で雷に打たれたよう目が覚めた。するとそこは見慣れた部屋の中。飛び起きた体からずり落ちていくタオルケットを手繰り寄せても、醒めた夢は戻らない。<br />
<br />
「…うそつき」<br />
<br />
　私にくれると言ったのに。<br />
　丸めたタオルケットを抱え込んだまま。横になり直すと、暗色の硝子に映る自分と目が合った。硝子の向こうは内海で、まだ夜が明けていないからだろう。そこには明るさの欠片もない。「海」とは名ばかりの水溜りは、外の明るさに合わせて光を帯びるのが常だった。そういうもの。海中にある居住区ではそうでもしないと実感として昼夜の別が分からなくなってしまうから。そして内海に満たされたアクアは、朝焼けの色を完璧なまでに再現する。<br />
　窓の外がすっかり白んでから、ようやくのろのろと起きだした。硝子面に指先を触れさせて「ニュース」と囁けば、耳が痛くなるほどの静寂を落ち着き払ったアナウンサーの声が追いやった。開かれた《窓》の隅に目をやると、起きるにはまだ随分と早い時間。それでももう眠れるような気はしなかった。どうせ同じ夢は見られない。<br />
<br />
「スケジュール」<br />
<br />
　今度は上向けた手の上に《窓》が開いて、そこには今日の予定が時間通りに整理されていた。授業が三つ。だけど時間はどれも遠い。一番早いものでも数時間後だ。教室まではこの寮から歩いたって三十分もあれば充分すぎる。<br />
　手の平を閉じると、握り潰されるようくしゃりと丸まり《窓》は消えた。<br />
<br />
「だから一人がよかったのに」<br />
<br />
<br />
<br />
---<br />
<br />
<br />
<br />
　冷たくも、温かくだってない。寝慣れた床に押し倒されて思わず喉がひきつった。<br />
<br />
「ア、ル！」<br />
<br />
　両手は頭上。片方ずつ掴まれていた手首は簡単に一纏めにされ、緩いシャツの裾を捲り上げられる。<br />
<br />
「なにする気！？」<br />
「お前が考えている通りのことだろうな」<br />
<br />
　一人で余裕そうな態度がやたらムカついた。<br />
<br />
「…足グセが悪いな」<br />
<br />
　膝から蹴り上げた足を避けるよう、落とされたアルの体が密着してきて。身を捩ることさえままならなくなる。<br />
　非難を告げようと開いた口まで躊躇いもなくあるは塞いだ。<br />
<br />
「あまり暴れると痛くするぞ」<br />
「やめるっていう選択はないわけ…」<br />
「お前が俺を心底嫌っているなら手も出さないがな。そうでないことは明らかだ。マナがお前の中にある以上、それくらいのことは分かる」<br />
<br />
　濡れた唇を舐めて笑う。アルの指先が触れたのは、丁度心臓の真上辺り。<br />
　そこに《心》があるのだとでもいわんばかりの、まるで慈しむような触れ方だった。<br />
<br />
「それとこれとは話が違う！」<br />
「同じことだよ」<br />
<br />
　たとえアルの言う通りなのだとしても、勢いで雪崩込むようなやり方は違う気がする。確かに出会いは奇跡的で、運命もきつく絡まり合ってしまったけど。<br />
<br />
「お前は俺を愛するだろう。俺がお前を愛したように」<br />
<br />
　結末が同じなら過程はどうだっていいなんて、そんな風には思いたくなかった。<br />
<br />
<br />
<br />
---<br />
<br />
<br />
<br />
　解けた手は背中に回って、もう一方の手と力の抜けた体を抱き起こした。<br />
　膝の上に跨るよう座らされ、乱れてしまっただろう髪に擦り寄るよう頬を寄せてくる。アルの手は、さっきまでの強引さが嘘のようにさり気なくシャツの裾を元に戻した。<br />
<br />
「いいさ…」<br />
<br />
　なだめるよう背中を行ったり来たりする。手の平は、私にとってもう安全なのだと分かった。目の前の肩へ顎を乗せるよう体をすっかり預けても、不安はない。<br />
　私の中に《マナ》があるからと、そう言ったアルの気持ちも分かるような気がした。きっと、こういう感覚なのだろう。理解よりも直感に近い。<br />
<br />
「お前に嫌われたくはない」<br />
<br />
　アルは言った。それでも結末は変わらない。だから私の望む通りにしてくれるのだと、言うほど押し付けがましくもない風に。<br />
<br />
「だが、唇は拒んでくれるなよ」<br />
<br />
　だからだろうか。断りをおいての触れ合いは、なんともなしに心地良かった。<br />
<br />
「こうして触れることも」<br />
「うん…」<br />
<br />
　それがアルの精一杯なら、私も譲歩すべきだろうと思う。何より単純でいて表面的な触れ合いは、私にとっても心地良かった。落ち着いて、穏やかな気持ちになれる。<br />
　それも抱き込んだ《マナ》の影響なのだろうか。<br />
<br />
「お前は俺のマナを受け入れた。本質的に俺はお前に逆らえず、お前を傷付けようとするものに容赦しない」<br />
「だから…？」<br />
「遠からず、お前は手に入れたものの意味を知ることになるだろう」<br />
<br />
　アルの語り口はあくまで穏やか。抱き竦めるよう回された腕も大人しく優しいままで、告げられた真実の意味なんて私は半分も理解できていないに違いなかった。それでもなんとなく想像することはできる。私は人工島に生まれた人間だから。<br />
　「力」の意味は知っていた。<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
]]>
    </description>
    <category>蜂の巣物語</category>
    <link>http://bloodshed.blog.shinobi.jp/%E8%9C%82%E3%81%AE%E5%B7%A3%E7%89%A9%E8%AA%9E/%E9%8A%80%E3%81%AE%E3%83%88%E3%82%A5%E3%83%AB%E3%83%BC%E3%83%87%EF%BC%9A%E5%8F%A4%E3%82%81%E3%81%AE%E8%A8%AD%E5%AE%9A%E3%81%A7%E6%9B%B8%E3%81%84%E3%81%9F%E3%81%B5%E3%82%8B%E3%81%84%E3%81%AE</link>
    <pubDate>Sun, 16 Dec 2012 13:40:49 GMT</pubDate>
    <guid isPermaLink="false">bloodshed.blog.shinobi.jp://entry/1241</guid>
  </item>
    <item>
    <title>ほんとはこうなるはずだった：おやすみ綺麗なお人形（Sky）</title>
    <description>
    <![CDATA[<br />
　一通りのことが終わると、参はあっけなく女に戻って甲斐甲斐しく叶の世話を焼いた。<br />
　元が自動人形なので、女だからといって同じ体格の同性一人抱え上げるにも苦労はしない。叶があてつけがましくぐったりと脱力していても、難なく身奇麗にしてしまう。<br />
　新しい服を着せられた叶はソファーに下ろされ、カップ一杯のコーヒーを両手に持たされる。その時ようやく、自分がまだ朝食も食べていないことに気付いた。<br />
　端末で確認すると、時計の針は二時を回っている。<br />
　午後だ。<br />
<br />
「おなかがすいた」<br />
<br />
　待っててね、とばかり。参は叶の頭をひと撫でしてキッチンに向かう。<br />
　体のあちこちが痛んで立ち上がる気も起きない叶は、大人しく朝食だか昼食だかおやつだかわからない食事が出来上がるのをソファーで待った。<br />
　ちびちびと飲むコーヒーがカップの中程まで減る頃には、トレーに乗せたハムエッグと焼きたてのパンが差し出される。<br />
　朝食だ。<br />
<br />
<br />
]]>
    </description>
    <category>蜂の巣物語</category>
    <link>http://bloodshed.blog.shinobi.jp/%E8%9C%82%E3%81%AE%E5%B7%A3%E7%89%A9%E8%AA%9E/%E3%81%BB%E3%82%93%E3%81%A8%E3%81%AF%E3%81%93%E3%81%86%E3%81%AA%E3%82%8B%E3%81%AF%E3%81%9A%E3%81%A0%E3%81%A3%E3%81%9F%EF%BC%9A%E3%81%8A%E3%82%84%E3%81%99%E3%81%BF%E7%B6%BA%E9%BA%97%E3%81%AA%E3%81%8A%E4%BA%BA%E5%BD%A2%EF%BC%88sky%EF%BC%89</link>
    <pubDate>Thu, 22 Nov 2012 19:23:44 GMT</pubDate>
    <guid isPermaLink="false">bloodshed.blog.shinobi.jp://entry/1240</guid>
  </item>

    </channel>
</rss>